2016-01-01から1年間の記事一覧

ポー唯一の長編、エドガー・アラン・ポー『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』ほか

皆様、こんにちは。小暮です。 今回は創元推理文庫より刊行されているエドガー・アラン・ポー著『ポオ小説全集2』について。久々のポーです。例によってネタバレあります。 「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」 ポー唯一の長編作品。海…

たまにはメジャーに。『火車』『白夜行』『魍魎の匣』

皆様、こんにちは。小暮です。12月です。 今回はメジャーな3冊について取り上げたいと思います。ミステリー作品なので一応気を遣ってみましたが、ネタバレあるかもしれません。 宮部みゆき『火車』 多重債務者の悲劇を描いた社会派ミステリー。サラ金やクレ…

グロテスクと純愛と。異様な魅力の江戸川乱歩『孤島の鬼』

皆様、こんにちは。小暮です。 今回は江戸川乱歩著『孤島の鬼』についてお送りします。多少ネタバレしていますので、ご注意ください。 乱歩作品のイメージ・・・ 長年、手を出せずにいた乱歩作品。あらすじだけ知っているものも幾つかありますが、テーマだけ…

歴史物としてニュートラルに読める遠藤周作『王妃マリー・アントワネット』

皆様、こんにちは。小暮です。 今回は、遠藤周作著『王妃マリー・アントワネット』についてです。 作品について 本作は18世紀フランスで、ブルボン王朝最後の王ルイ16世妃マリー・アントワネットに焦点を当てたものです。日本でもおなじみの彼女ですが、同じ…

「寛仁の君」と呼ばれた若き君子。清少納言『枕草子』〜一条天皇篇〜

皆様、こんにちは。小暮です。11月です。 今回は「枕草子」より、一条天皇・懐仁について取り上げたいと思います。 一条天皇について 第66代天皇である一条帝は、わずか7歳で即位しました。枕草子に出てくるのは主に10代後半の姿です。父は円融天皇、母は藤…

実は人間失格ではないという話なのかも。太宰治『人間失格』

皆さま、こんにちは。小暮です。10月です。9月はついに1回も更新できませんでしたが、今月はいくつか更新したいと思っています。 今回は太宰治『人間失格』についてです。 恥の多い生涯を送って来ました。 この一言が有名な『人間失格』。太宰は小説の書き出…

夏の終わりに・・・少年の星と少女の花。宮沢賢治『銀河鉄道の夜』ほか

皆さま、こんにちは。小暮です。 今日は宮沢賢治著『銀河鉄道の夜』……など、についてです。 宮沢賢治の代表作である『銀河鉄道の夜』。非常にファンも多い作品です。 貧しい少年ジョバンニと、巡り合わせでなんとなく距離を置くことになってしまった友人カム…

文化人は博識、というより雑識?寺山修司『幻想図書館』

皆さま、こんにちは。小暮です。 今日は寺山修司著『幻想図書館』について。 寺山修司という人が「寺山修司の本棚」なんていうブログをやっていたとしたら 「髪に関する面白大全。ブルック・アダムス『髪』」 「眠られぬ夜の拷問博物誌。ローラン・ヴィルネ…

大正浪漫・少女小説の決定版。吉屋信子『花物語』

皆さま、こんにちは。小暮です。 今日は吉屋信子著『花物語』についてお届けします。 女学生のバイブル『花物語』 吉屋信子は大正時代に活躍した少女小説家として知られ、10代から書き始めた短編小説集『花物語』は当時の大ベストセラーとなりました。 少女…

言葉の限界という境地。ヘルマン・ヘッセ『シッダールタ』

皆さま、こんにちは。小暮です。 今日はヘルマン・ヘッセ著『シッダールタ』について。読み始めてから幾星霜……ようやく読み終えました。 ヘッセの宗教的体験を描いたという『シッダールタ』 著者のヘルマン・ヘッセは20世紀はじめに活躍したドイツの文豪で、…

仕組まれた運命に戦慄。華やかな和のホラファンタジー小野不由美『東亰異聞』

皆さま、こんにちは。小暮です。 今日は小野不由美著『東亰異聞』についてです。 著名な作品が多い小野不由美さん 小野不由美さんといえば、2013年に山本周五郎賞を受賞した『残穢』や、アニメ化もされた『十二国記』などの作品が知られています。『残穢』は…

天使のような幼子と幽霊。ヘンリー・ジェイムズ『ねじの回転』|英米怪奇小説

皆さま、こんにちは。小暮です。8月です。 今日はヘンリー・ジェイムズ『ねじの回転』についてです。以前、読みたい本として挙げていた一冊。期待に応える内容でした。 アメリカに生まれイギリスで活躍した作家 ヘンリー・ジェイムズは19~20世紀のアメリカ…

遅ればせながらタイトルの重要性に気づく

皆さま、こんにちは。小暮です。 今日は珍しくコラム記事になります。 7月は「19世紀イギリス怪奇小説」をテーマに更新しておりましたが、前回で一応の区切りとしたいと思います。まだご紹介したいものもあるのですが、今後は他ジャンルのものと織り交ぜて取…

世にも美しいヴァンパイアの物語。シェリダン・レ・ファニュ『吸血鬼カーミラ』|19世紀イギリス怪奇小説

皆さま、こんにちは。小暮です。 今日はシェリダン・レ・ファニュ『吸血鬼カーミラ』についてです。 レ・ファニュはアイルランド出身ですが、19世紀怪奇小説の主たる担い手であり、イギリス文学界に大きな影響を与えていることから、今回ご紹介することにし…

マニアックだけどおすすめ。ブラックウッド『秘書綺譚』&マッケン『白魔』|19世紀イギリス怪奇小説

皆さま、こんにちは。小暮です。 今日はブラックウッド『秘書綺譚』&マッケン『白魔』について書いてみたいと思います。 アルジャーノン・ブラックウッド『秘書綺譚』 サイレンス博士シリーズなどで知られるイギリスの怪奇作家ブラックウッドの著作。ショー…

すれ違う父子のようだった、メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』|19世紀イギリス怪奇小説

皆さま、こんにちは。小暮です。 今日はメアリー・シェリー『フランケンシュタイン』についてです。 名もなき怪物の物語 超有名どころ。知らぬ人はない、といっていいと思います。天才科学者によって生み出された怪物の物語であるのは周知の事実ですが、フラ…

有名すぎて読まないホラーを読む。ロバート・ルイス・スティーヴンソン『ジーキル博士とハイド氏』|19世紀イギリス怪奇小説

皆さま、こんにちは。小暮です。 今回は19世紀イギリス怪奇小説の一つ、ロバート・ルイス・スティーヴンソン著『ジーキル博士とハイド氏』をご紹介したいと思います。 有名な作品でもありますし、ネタバレで参ります。ご注意を。(と思いましたが、多少まろ…

怪奇小説の元祖・ゴシック小説とは?

皆さま、こんにちは。小暮です。7月です。 もう半年以上、月1~2記事の更新が続いておりますが、今月はもう少し更新できたらと思っています。 さて、今回から19世紀イギリスの怪奇小説をテーマにお送りしたいと思います。第1回目は前書きとして怪奇小説のル…

奇妙な世界にはまる"不条理系"短編小説5選

皆さま、こんにちは。小暮です。 今回はお薦めの短篇集5冊をご紹介します。 星新一選『ショートショートの広場』 星さんといえばショートショートの旗手ですが、SFに興味のない私は星さんの作品より星さんに選ばれた一般の方の作品のほうが好きでした。味噌…

美とグロテスクは紙一重。チョーヒカル『SUPER FLASH GIRLS』

皆さま、こんにちは小暮です。6月です。 さて今回はチョーヒカル著『SUPER FLASH GIRLS』についてご紹介します。ボディペイントの作品集です。 話題のチョーヒカルさん。 若手女性アーティストでいらっしゃいます。まだ大学を卒業されたばかりなのでしょうか…

Coccoとマツコとトドと**。『クイック・ジャパンvol.91』掲載インタビュー及び『想い事。』

皆さま、こんにちは。小暮です。 今日は『クイック・ジャパンvol.91』掲載インタビュー及びCocco著『想い事。』についてです。 歌手のCoccoさんが岩井俊二監督の映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』に出演していると聞き、懐かしさのあまりググってみまし…

創元推理文庫に頼ることにしたエドガー・アラン・ポー『ベレニス』『モレラ』『リジイア』ほか

皆さま、こんにちは。小暮です。はや4月です。 今日は懸案のポー作品についてお送りします。 前書き ポー作品のコンプリートチャレンジなるものに取り組んでいるのですが、やりますといった後でポーの全集を探すという見切り発車ぶりでありました。電子書籍…

一日の終わりに読みたい軽妙な短編小説集 ケイト・アトキンソン『世界が終わるわけではなく』

皆さま、こんにちは。小暮です。いつのまにやら2月です。 今日はケイト・アトキンソン『世界が終わるわけではなく』についてです。 と、その前に一言。このブログのスタンスについて このブログの記事をどういうふうに書いていくか考えていたのですが、器用…

毒舌の裏に涙の人生あり。田辺聖子『小説枕草子 むかし・あけぼの』

皆さま、こんにちは。小暮です。お久し振りです。 読了まで随分かかってしまいました。しかし、ずっと読みたかった田辺聖子氏の『むかし・あけぼの』を読み終えることができ、大満足です。以下、早速感想など。 まず小説化に拍手! 枕草子は、清少納言が日常…

思った以上にゴシック小説だった、エミリー・ブロンテ『嵐が丘』

皆さま、こんにちは。小暮です。 2016年あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。 お正月は長編小説を読んで(だらだら)過ごしておりました。 今日は年末から元旦にかけて読んでいたエミリー・ブロンテ『嵐が丘』についてです。 名作『…