文学

再考『人間失格』。太宰治の苦悩に思いを馳せ……

皆さま、こんにちは。小暮です。5月です。 今回は改めて太宰治の『人間失格』を取り上げたいと思います。 スポンサードリンク // 太宰治『人間失格』をもう一度 一度記事を書いたものの、手応えがなくもやもやしていた「人間失格」。あえなく再考の運びとな…

しみじみ読める人情派時代小説『深川澪通り木戸番小屋』『おせん』

皆さま、こんにちは。小暮です。 今回は北原亞以子著『深川澪通り木戸番小屋』と池波正太郎著『おせん』を。 スポンサードリンク // 北原亞以子『深川澪通り木戸番小屋』 20年ほど前のNHKドラマ「とおりゃんせ〜深川人情澪通り」の原作です。ドラマでは神田…

ほろ酔いの幻想大学生活綺譚。森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』

皆さま、こんにちは。小暮です。 今回は森見登美彦著『夜は短し歩けよ乙女』を。 スポンサードリンク // 笑って泣ける『夜は短し歩けよ乙女』 表紙イラストのイメージが強く、読みながらずっとあの絵を思い浮かべてしまいます。主役の黒髪の乙女はとても可愛…

短く読みやすい。土方・沖田の人物像も魅力の司馬遼太郎『新撰組血風録』

皆さま、こんにちは。小暮です。3月です。 今回は司馬遼太郎著『新撰組血風録』についてです。 司馬遼太郎と『新撰組血風録』 歴史小説家として名高い司馬遼太郎。「竜馬がゆく」「坂の上の雲」などがよく知られているかと思います。新撰組を題材にした長編…

狂気?ジョーク?とてつもなく変な本ウラジーミル・ナボコフ『青白い炎』

皆さま、こんにちは。小暮です。 今回はウラジーミル・ナボコフ著「青白い炎」についてです。 技巧派といわれる作家ナボコフ ナボコフは20世紀前半に活躍したロシア出身の作家。代表作はかの有名な「ロリータ」です。残っている写真を見るといかにも気難しそ…

可笑しく、少し切なく、貧乏を唄う『林芙美子詩集』

皆さま、こんにちは。小暮です。ブログのデザインを変更しました。 今回は「林芙美子詩集」を取り上げたいと思います。 『放浪記』で知られる林芙美子 林芙美子といえば、長年故森光子さんが主演を務めた舞台の原作「放浪記」の作者として知られています(「…

美しくも問題作だった、森鴎外『舞姫』

皆さま、こんにちは。小暮です。2月です。 今回は森鴎外著「舞姫」についてです。角川文庫の古い本を読みました。表題作ほか「うたかたの記」「文づかい」読了。翻訳の「ふた夜」は割愛。「普請中」収録されず。文語体で読みにくさ抜群でした。細かい文意を…

強いヒロインとゴシック色が印象的。シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』

皆さま、こんにちは。小暮です。2017年です。明けてからだいぶ経ってしまいましたが、今年もどうぞよろしくお願いいたします。 新年最初はシャーロット・ブロンテ著『ジェイン・エア』です。去年の年始は妹エミリーの著作『嵐が丘』を読んでいたのですが、今…

たまにはメジャーに。『火車』『白夜行』『魍魎の匣』

皆様、こんにちは。小暮です。12月です。 今回はメジャーな3冊について取り上げたいと思います。ミステリー作品なので一応気を遣ってみましたが、ネタバレあるかもしれません。 宮部みゆき『火車』 多重債務者の悲劇を描いた社会派ミステリー。サラ金やクレ…

歴史物としてニュートラルに読める遠藤周作『王妃マリー・アントワネット』

皆様、こんにちは。小暮です。 今回は、遠藤周作著『王妃マリー・アントワネット』についてです。 作品について 本作は18世紀フランスで、ブルボン王朝最後の王ルイ16世妃マリー・アントワネットに焦点を当てたものです。日本でもおなじみの彼女ですが、同じ…

実は人間失格ではないという話なのかも。太宰治『人間失格』

皆さま、こんにちは。小暮です。10月です。9月はついに1回も更新できませんでしたが、今月はいくつか更新したいと思っています。 今回は太宰治『人間失格』についてです。 恥の多い生涯を送って来ました。 この一言が有名な『人間失格』。太宰は小説の書き出…

夏の終わりに・・・少年の星と少女の花。宮沢賢治『銀河鉄道の夜』ほか

皆さま、こんにちは。小暮です。 今日は宮沢賢治著『銀河鉄道の夜』……など、についてです。 宮沢賢治の代表作である『銀河鉄道の夜』。非常にファンも多い作品です。 貧しい少年ジョバンニと、巡り合わせでなんとなく距離を置くことになってしまった友人カム…

文化人は博識、というより雑識?寺山修司『幻想図書館』

皆さま、こんにちは。小暮です。 今日は寺山修司著『幻想図書館』について。 寺山修司という人が「寺山修司の本棚」なんていうブログをやっていたとしたら 「髪に関する面白大全。ブルック・アダムス『髪』」 「眠られぬ夜の拷問博物誌。ローラン・ヴィルネ…

大正浪漫・少女小説の決定版。吉屋信子『花物語』

皆さま、こんにちは。小暮です。 今日は吉屋信子著『花物語』についてお届けします。 女学生のバイブル『花物語』 吉屋信子は大正時代に活躍した少女小説家として知られ、10代から書き始めた短編小説集『花物語』は当時の大ベストセラーとなりました。 少女…

言葉の限界という境地。ヘルマン・ヘッセ『シッダールタ』

皆さま、こんにちは。小暮です。 今日はヘルマン・ヘッセ著『シッダールタ』について。読み始めてから幾星霜……ようやく読み終えました。 ヘッセの宗教的体験を描いたという『シッダールタ』 著者のヘルマン・ヘッセは20世紀はじめに活躍したドイツの文豪で、…

仕組まれた運命に戦慄。華やかな和のホラファンタジー小野不由美『東亰異聞』

皆さま、こんにちは。小暮です。 今日は小野不由美著『東亰異聞』についてです。 著名な作品が多い小野不由美さん 小野不由美さんといえば、2013年に山本周五郎賞を受賞した『残穢』や、アニメ化もされた『十二国記』などの作品が知られています。『残穢』は…

奇妙な世界にはまる"不条理系"短編小説5選

皆さま、こんにちは。小暮です。 今回はお薦めの短篇集5冊をご紹介します。 星新一選『ショートショートの広場』 星さんといえばショートショートの旗手ですが、SFに興味のない私は星さんの作品より星さんに選ばれた一般の方の作品のほうが好きでした。味噌…

一日の終わりに読みたい軽妙な短編小説集 ケイト・アトキンソン『世界が終わるわけではなく』

皆さま、こんにちは。小暮です。いつのまにやら2月です。 今日はケイト・アトキンソン『世界が終わるわけではなく』についてです。 と、その前に一言。このブログのスタンスについて このブログの記事をどういうふうに書いていくか考えていたのですが、器用…

毒舌の裏に涙の人生あり。田辺聖子『小説枕草子 むかし・あけぼの』

皆さま、こんにちは。小暮です。お久し振りです。 読了まで随分かかってしまいました。しかし、ずっと読みたかった田辺聖子氏の『むかし・あけぼの』を読み終えることができ、大満足です。以下、早速感想など。 まず小説化に拍手! 枕草子は、清少納言が日常…

思った以上にゴシック小説だった、エミリー・ブロンテ『嵐が丘』

皆さま、こんにちは。小暮です。 2016年あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。 お正月は長編小説を読んで(だらだら)過ごしておりました。 今日は年末から元旦にかけて読んでいたエミリー・ブロンテ『嵐が丘』についてです。 名作『…

想い出の小説ヘルマン・ヘッセ『車輪の下』『デミアン』を比較

皆さま、こんにちは。小暮です。お久し振りです。 12月に入ってやたら忙しくなっておりました。 久々の今回はヘルマン・ヘッセ『車輪の下』『デミアン』です。 薄々読みにくいなと感じていたので、改行の仕方を変えています。 ヘルマン・ヘッセの『車輪の下』…

頭痛の前兆で歯車が見える。「閃輝暗点」と作家の苦悩。芥川龍之介『歯車』

皆さま、こんにちは。小暮です。ややお久しぶりです。 今日は芥川龍之介著『歯車』についてご紹介します。 『歯車』について 芥川作品の最高傑作という声もある、評価の高い作品です。 主人公の「僕」が頭痛の前兆として幻視する透明な「歯車」が 不安の象徴…

ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』

皆さま、こんにちは。小暮です。 昨日からヴィクトリア朝特集をやっております。 今日はルイス・キャロル著『不思議の国のアリス』について。 『不思議の国のアリス』 ルイス・キャロルの筆名でチャールズ・ラトウィッジ・ドジソンが書いた 子供向けの小説で…

トーマス・マンに見入られた少年たち『ヴェニスに死す』

皆さま、こんにちは。小暮です。 今日はトーマス・マン『ヴェニスに死す』について。 といっても今回は、作家や作品にまつわる裏話が中心です。 トーマス・マン『ヴェニスに死す』 トーマス・マンはドイツの作家で、 『魔の山』『ヴェニスに死す』などの著作…

ある朝、目覚めると、虫になっていた。フランツ・カフカ『変身』

皆さま、こんにちは。小暮です。 この3日間、不思議を扱った小説をご紹介しています。 ラストはフランツ・カフカ著『変身』について。 不条理な不思議がテーマです。 カフカについて 20世紀前半に生きた作家で、保険局に勤めながら執筆活動をしていました。 …

怪奇作家が描く運命の恋。夢野久作『押絵の奇蹟』

皆さま、こんにちは。小暮です。 昨日から3日間、不思議を扱った小説をご紹介しています。 2回目は夢野久作著『押絵の奇蹟』について。 切ない不思議がテーマです。 夢野久作について 大正から昭和の初めにかけて活躍した作家です。 出家して還俗したり、新…

夢とうつつが交錯する和の幻想綺譚。平野啓一郎『一月物語』

皆さま、こんにちは。グレコです。 今日は平野啓一郎著『一月物語』について。 作家について 京都大学在学中に雑誌に掲載されたデビュー作『日蝕』が芥川賞を受賞。 当時の最年少記録でしたので、大変に注目されました。 『一月物語』は受賞後の作品です。 …

少年を蝕む夏のまぼろし。長野まゆみ『夜啼く鳥は夢を見た』

皆さま、こんにちは。グレコです。 今日は長野まゆみ著『夜啼く鳥は夢を見た』について。 その作品世界 著者は初期のころ少年が主役の不思議で美しい作品を 幾つも発表していました。 鉱物や色彩、植物にこだわった世界観を展開します。 この作品もその一つ…

田辺聖子『田辺聖子の今昔物語』

皆さま、こんにちは。グレコです。 今日は田辺聖子著『田辺聖子の今昔物語』について。 この作品について 平安時代に成立した説話集である『今昔物語』から、 本朝世俗篇に焦点を当て、作家が選り抜いた物語を 作家の感性で現代語の物語に仕立て直したもので…

出会いは教科書。授業中に感動した芥川龍之介『羅生門』

皆さま、こんにちは。グレコです。 今日は芥川龍之介『羅生門』について。 この作品について 芥川が無名の学生時代に執筆した短編小説です。 『今昔物語集』にある話が題材になっています。 この小説を発表したとき若干23歳。 鮮やかに才走る一作です。 『羅…