可笑しく、少し切なく、貧乏を唄う『林芙美子詩集』
皆さま、こんにちは。小暮です。ブログのデザインを変更しました。
今回は「林芙美子詩集」を取り上げたいと思います。
『放浪記』で知られる林芙美子
林芙美子といえば、長年故森光子さんが主演を務めた舞台の原作「放浪記」の作者として知られています(「放浪記」は未読)。
個人的にはご飯の作家というイメージがあります。実際に食道楽だったようです。
文壇ではあまり評判が良くなかったような噂もちらほら。
林芙美子と詩集
働きながら詩を書き続けていたという芙美子。
貧しく苦難に満ちた人生を生きる若い女性の心情を、飾り気なくとか、率直にというと聞こえがいいですが、言ってしまえば、かなり”あけすけ”につづっています。
1929年に詩集「蒼馬は見たり」を自費出版していますが、あの時代にどうだったのだろうと思ったら、本人曰く”詩壇の誰にも相手にされなかった”とか。
それでも、詩集の序文を書いてくれた人物がいたようです。捨てる神あらば拾う神ありですね。
切なくも可笑しい林芙美子の詩
苦境にありながら、あまりにあけすけでついくすっと笑ってしまう彼女の詩。
タイトルからして「苦しい唄」に「疲れた心」ときます。「苦しい唄」では、
陳列箱に
ふかしたてのパンがあるが
私の知らない世間は何とまあ
ピヤノのやうに軽やかに美しいのでせう。
そこで始めて
神様コンチクショウと吐鳴りたくなります。
人生うまくいっていないのだけれど、非常にエネルギーがあります。
家賃と仕送りに追われ、お金がなく「天から降ってこないかなあ……」とこぼしたり、酔いどれたり、恋愛がうまくいかずに「地球飛んじまえ」と吐き捨てたり、生活苦にもがきながらも逞しい。
この仕事・お金・恋愛に苦労していた人が、作家の夢をつかんで、食道楽に生きるのだから、まさにサクセスストーリー。
詩に満ちる生命力は、どん底から這い上がるタフさの片鱗かもしれません。
まとめ
疲れているときに読むと、「昔、こんなに苦労した人がいた」というのに励まされそうです。
その後、作家として成功しているのも手伝って、明けない夜はないというメッセージも感じられる一冊ではと思います。