強いヒロインとゴシック色が印象的。シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』

 

皆さま、こんにちは。小暮です。2017年です。明けてからだいぶ経ってしまいましたが、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

新年最初はシャーロット・ブロンテ著『ジェイン・エア』です。去年の年始は妹エミリーの著作『嵐が丘』を読んでいたのですが、今年はお姉さんのほうを。『嵐が丘』との違いについても触れてみたいと思います。

 

ジェイン・エア』のあらすじ

本作のタイトルはヒロインの名前です。孤児のジェインは、血の繋がらない伯母のもとで、虐待を受けて育ちます。ある夜、かつて伯父が息を引き取った部屋に閉じ込められたジェインは、恐怖と従兄弟から受けた暴力のために倒れ、この出来事がきっかけでローウッド養育院に送られることに。

しかし、自分を嫌っている伯母がまともな教育機関を選んでくれるはずもなく、ごく少量の食べ物に、寒さをしのげない衣服と、劣悪な環境で過ごすことになります。それでも、やさしく聡明なテンプル先生や、神秘的な少女ヘレンと出会い、親交を温めていきます。やがてローウッドを病魔が襲い、多数の犠牲を出しますが、そのせいで養育院の内情が露見。世間の非難を浴びて、環境が一気に改善されます。ジェインは16歳まで教育を受け、その後2年を教師として勤めてから、家庭教師になります。

その赴任先の当主だったのが、ロチェスター。ジェインよりも20歳年上ですが、二人は惹かれあいます。ところが、ロチェスターにはひた隠しにしている秘密がありました。

 

巧みに取り込まれたゴシック要素

前半は19世紀イギリスらしい物語運びです。「小公女セーラ」とか、「あしながおじさん」とか、あのへんの物語を彷彿とさせます。若い家庭教師と年上の一家の主が惹かれあう様子には、映画「サウンド・オブ・ミュージック」を連想したくなるかもしれません。

ただ、こうした物語と一線を画すのが、散見されるゴシック要素。ゴシック小説として紹介されることも多い「ジェイン・エア」ですが、はじめのほうはそうした要素は見られず読みながら首を傾げていました。しかし、ロチェスターの屋敷ソーンフィールド・ホールに舞台が移ると、謎めいた事件が起こるようになり、一気にゴシック色を感じられるようになります。

スポンサードリンク
 

冷静でタフなヒロイン

印象的なのは、なんといってもヒロインであるジェインの強さです。幼いころに苦労した彼女は、控えめながら芯が強く、いつも冷静で、立場をよくわきまえています。やさしく、正義感が強いのですが、情に流されはしません。聡明そのもの。正直、これで18歳なのだろうかと思ってしまう。

伯母であるミセス・リードの屋敷ゲイツヘッド・ホールにいたころも、ひどい仕打ちに悲しむばかりではなく、怒り、敢然と言い返す姿が描かれています。10歳にして、自分が粗末に扱われるのが不当だとちゃんと理解している。自分の価値を信じるのが難しいような状況の中で、誇りを保てたのがすごいなと。まずリード家の面々がおかしいのは言わずもがなですが。

さらにロチェスターの求婚を拒む場面。二人は相思相愛なのですが、ロチェスターには法律上の不備があります。このままだとジェインの立場がありません。向こうに気持ちがないわけではないし、ジェインにははっきり愛情があるので、相当に難しい判断だったでしょう。彼女はきっぱりと断り、家を出て行きます。「八日目の蝉」の希和子にもこのくらいの強さがあったらなと考えてしまいました。

 

作品の弱点?

ソーンフィールド・ホールを後にしたジェインは、無一文になってしまい、見知らぬ土地をさまよいます。野垂れ死に寸前でたどり着いたのがムーア・ハウス。寒さにこごえる夜、温かな窓辺に浮かび上がる二人の姉妹の姿は美しいの一言です。このムーア・ハウスの住人とジェインには浅からぬ縁があり、さらに遺産相続の話も舞い込みます。このあたりは、ご都合主義といってしまえばそうですね。ムーア・ハウスでの日々は、やや退屈に感じられました。ジェインの心を写していたのかもしれません。

(+追記)ここらへんの展開はよく批判されるようです。また姉妹の兄セント・ジョンに求婚されるジェインですが、彼は明らかにジェインへの愛情がゼロなので、あんまり存在感がありません。こうしたところがムーア・ハウスでの日々がちょい残念な理由です。(追記ここまで)

その後、ジェインが足を向けることになる朽ちた廃墟、森の奥のマナーハウス……少女時代から次々に居を移しているジェインですが、建物の描き方に情趣が感じられます。廃墟の登場は、ジェインの心情も相俟って、あっと驚かされました。

 

ジェイン・エア』と『嵐が丘

ブロンテ姉妹として知られるシャーロットとエミリー。ここに「アグネス・グレイ」の作者アンを含めることも少なくありませんが、ことに有名作品を残したのが前述の二人です。

二作は、活動的だったというシャーロットと繊細だったらしいエミリーの、それぞれの個性が集約されているように思います。「嵐が丘」が神秘的な広がりを感じさせるのに対し、「ジェイン・エア」はとても現実的。一方で、前者が大きな力の為すがままであるのに対し、後者は意志の力で運命を切り拓いていきます。

嵐が丘」は、がっつりゴシック小説といえそうです。このあたりが、ゴシック小説ブームが終わったばかりだったという当時、流行らなかった理由かもしれません。「ジェイン・エア」のほうはゴシック要素は薄めで、進歩的な感じもします。姉妹の性格の違いを感じ取りながら読んでも面白いかもしれません。「嵐が丘」について書いた記事はこちらです。

glleco.hateblo.jp

 

まとめ

今回、光文社・古典新訳文庫から刊行されているものを読みました。なんと上下巻で 1000ページ以上。読了できるか不安だったのですが、読み始めるとぐいぐい引き込まれてしまいました。一人称で読みやすいのに加え、謎めいた展開で先が気になります。込み入った「嵐が丘」に比べ、とっつきやすい作品ではないでしょうか。読後感も良いです。

 

スポンサードリンク
 
広告を非表示にする