夏の終わりに・・・少年の星と少女の花。宮沢賢治『銀河鉄道の夜』ほか

 

皆さま、こんにちは。小暮です。

今日は宮沢賢治著『銀河鉄道の夜』……など、についてです。

 

宮沢賢治の代表作である『銀河鉄道の夜』。非常にファンも多い作品です。

貧しい少年ジョバンニと、巡り合わせでなんとなく距離を置くことになってしまった友人カムパネルラ。星祭が開催される夜、意地悪なクラスメイトのザネリにからかわれて傷ついたジョバンニは丘の上まで一人で駆けていきます。天気輪の柱のそばで天の川の架かる夜空を眺めていたジョバンニの耳に、「銀河ステーション」という声がしたかと思うと、不思議なことに汽車に乗り込んで座席に座っていたのでした。そこにはカムパネルラも乗り合わせていたのです。

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「天気輪の柱」というのは東北の寺や墓地などに設置される柱で、多分に死者を思い起こさせるもののようです。

金剛石、黒曜石、月長石といった鉱物もたくさん出てきます。銀河を駆ける汽車という幻想的なモチーフが、少年の繊細な感性を写し取っているようです。

賢治の描く物語は、美しく繊細なんだけれども、いつもどこか悲しい。この物語も、光り輝く星々が深い闇の中に浮かんでいるのだということを、思わずにはいられない寂寥感が漂っています。結末もとても悲しい。

純粋さを感じさせる優しい筆致の中に、寂しさや悲しみが垣間見えるのは、金子みすずの詩と似ている気もします。賢治のほうがもう少し大人目線の印象ですが。

「雨にも負けず風にも負けず雪にも夏の暑さにも負けぬ丈夫なからだをもち……中略……そういうものにわたしはなりたい」

この詩が広く知られている一方で、賢治自身は病弱だったといいます。

そうした事情も相俟って、この作品を読んでいても、遥かな虚空を見つめる少年の悲しい瞳のイメージが浮かんできました。

輝く青い星々と、ブラックホールすら内包する宇宙の暗闇……そうしたイメージが見事に表現されているのがこちらの絵本。清川あさみさんの作品です。写真に刺繍を施すという斬新な手法で描かれています。もう表紙が好きなんですよね……。 

さて、先日記事にした吉屋信子の『花物語』。

glleco.hateblo.jp

銀河鉄道の夜』が少年の世界だとすると、こちらは少女の世界です。信子自身が10~20代で執筆したものなので、迷いなく現実離れした設定を描ききっていて、少女の夢と憧れが思い切り詰め込まれているのが感じられます。

……この記事、出来が悪くて反省しきりでしたが、うまく書きなおせる気もせず、もやもやしておりました。『銀河鉄道の夜』の記事を書くにあたって、この作品との対比というアイデアが浮かんだので、ねじ込むことに……。

両者の繊細さは、質が違うなあと思います。『花物語』は”未来に向かって花咲こう、生きよう”としているのが感じ取れ、それが力強くもある。青白い、蛍火のような真の繊細さは『銀河鉄道の夜』のほうにありそうです。

……繊細さや美しさをどう書き表したらいいのか悩みます。

寺山修司の記事など読み返してみると悪趣味な本のほうが生き生きしてるなと……まあ、私、悪趣味な人間ですけれど。

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