粒ぞろいの幽霊譚。英米女性作家8短篇『ゴースト・ストーリー傑作選』

 

皆さま、こんにちは。小暮です。

今日は英米女性作家8短篇『ゴースト・ストーリー傑作選』についてです。

 

ゴースト・ストーリーについて

19世紀半ばから20世紀初頭にかけて、

イギリスとアメリカで人気だった小説のジャンルで、

幽霊はもちろん、さまざまな超自然を題材にしていました。

当時は、神秘主義が大流行していた時代で、

おそらくそうした時代背景も反映していたと思われます。

イギリスとアメリカは今でもオカルト好きのイメージがありますが

伝統が受け継がれているのかもしれません。

この本が女性作家に焦点を当てているのは、

ゴースト・ストーリーの担い手の7割が女性作家だったという

事情を踏まえています。

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作品紹介(イギリス篇)

英米作家、各4編ずつ収録されています。

まずはイギリス人作家の作品です。

 

『老いた子守り女の話』エリザベス・ギャスケル

子守りをする老女が、幼い子供たちに昔話を始めるところから

物語は幕を開けます。由緒正しい貴族の屋敷、開かずの間、美しい貴婦人の肖像画

夜な夜な鳴り響くオルガン、幽霊の少女……

ゴースト・ストーリーと聞いて期待する要素がめいっぱい詰め込まれています。

 

『冷たい抱擁』メアリー・エリザベス・ブラッドン

シェイクスピアの物語を彷彿とさせるような、

古風な趣のある物語です。

首筋にまきつく見えない腕と、罪ゆえの苦悩。

主人公の葛藤と凋落が、格調高く描かれています。

 

『ヴォクスホール通りの古家』シャーロット・リデル

確かに幽霊は出てくるんですが……

個人的には?がいっぱいになる話でした。

元気な主人公と謎解き要素はいらんです……。

あんまりきちっと解明もされておらず、消化不良の感は否めません。

 

『祈り』ヴァイオレット・ハント

怖い話ではありましたが、ちっとも超自然ではない気がしました。

……主人公が鬼畜です……。

それも無自覚なので、余計に震えあがります。

 

作品紹介(アメリカ篇)

こちらはアメリカ人作家の作品です。

 

『藤の大樹』シャーロット・パーキンズ・ギルマン

三組の若い夫婦がオバケ屋敷を好奇心で探索したところ、

そこは100年前の不幸が眠る場所であったことが知れます。

導入とラストが素晴らしい作品です。

 

『手紙』ケイト・ショパン

亡き妻から託された手紙には、

決して開かずに処分してほしいとのメモが添えられており、

遺された夫の苦悩の日々が始まります。

一読した分には超自然要素ゼロに思えましたが……

超自然なのかどうかは、ラスト一行の解釈によるのかも。

 

『ルエラ・ミラー』メアリ・ウィルキンズ・フリーマン

悪名高いルエラ・ミラーが生前住んでいた屋敷は、

立ち入った人の命を奪う家として知られていましたが……

果たしてルエラ・ミラーとはどんな人物だったのかが語られますが、

結構いそうなかんじでした……悪寒が……。

 

『呼び鈴』イーディス・ウォートン

田舎で療養する病身のレディに仕えることになった主人公は、

屋敷について早々、不思議な人影を見ます。

人々はその話題についてだけよそよそしく、

レディもどういうわけか主人公を呼ぶときに

呼び鈴は使おうとしません。けれど、ある夜、呼び鈴が鳴り響きます。

ラストを飾るに相応しい完成度の高さでした。

 

まとめと感想

ホラー度は低めだと思います。

怖い話というよりも、不思議な話というほうがピッタリです。 

 この時代の家制度は息苦しいほど厳格だったようで、

”家”に囚われた人々の窮屈さが暗に伝わってきました。

見えない捕縛縄への怒りとか、恨みが

幽霊に託されていたのかもしれません。

 

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