少納言が仕えた永遠のヒロイン。清少納言『枕草子』~中宮定子篇~2

 

皆さま、こんにちは。グレコです。

今日は昨日に引き続き、中宮定子に焦点を当ててみたいと思います。

 

エピソード4

『無名といふ琵琶の御琴を』

一条帝が定子の元を訪れたときのエピソード。

笛の名手である一条帝は音楽が大好きだったようで、

琵琶を持ってきて、戯れに女房たちに弾かせて面白がるなどしていたようです。

帝の住まう清涼殿には変わった名前の楽器がたくさんあったらしく、

一例を挙げると、玄上、渭橋、朽目、塩釜、水竜、釘打、葉二など。

少納言がふと思いついて、

「この琵琶の名はなんというのでしたか」と尋ねると、

「とてもはかなくて、名前もないのよ」という定子の答え。

琵琶の名は、無名というのでした。

冗談が大好きな定子、どうも父親譲りのようです。

 

エピソード5

『清涼殿の丑寅の隅の』

清涼殿の大瓶に生けられた桜を眺めながら、

一条帝と中宮定子、梅壷の女房たち、そして大納言伊周が過ごす情景。

吟詠が得意な伊周が一条帝と定子のために古歌を吟じ、

定子が故事に見立てた謎かけをして、さらには後宮の歴史について語ります。

なんでも、宣耀殿の女御という人は、村上帝に古今和歌集二十巻にわたり、

試験をさせられたとか……。

「私は三四巻で根を上げそうだなあ」

とは、一条帝のあどけない感想。

のどかで幸せなある日の一幕です。

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君臣一致

定子の兄である内大臣・伊周が長徳の変により失脚すると、

ちょうど初産で内裏を辞していた定子は、

ショックで落飾(髪を短く切ること)したのもあり、

内裏には戻らない時期がありました。

その間、少納言は定子の元を離れていたようです。

というのも、少納言が伊周の政敵である道長派とも仲が良かったというので、

同僚の女房たちに嫌われてしまったようなのです。

しかし、そのときに定子から山吹の花片の文(手紙)を貰い、

少納言は感激して定子の元に戻っています。

 

少納言の才能は宮中で花開き、

それは定子によって導き出されたものでした。

次々投げかけられる定子からの難問。

そのために頭を捻るのが、少納言も面白くて仕方なかったんだと思います。

才能というのは、楽しんでやれるかどうかというのもありますから。

打てば響く、という間柄になっていったのでしょう。

 

まとめと感想

やはり、その後の悲運を思うと遣る瀬無い。

少納言が、定子の明るく輝いていた日々を

枕草子に封じ込めておきたい気持ちもよくわかります。

枕草子の定子は決して完璧な聖女ではなく、

ちょっときつめの冗談を言ったり、悪戯っぽく少納言をからかったり、

華やかな趣向を凝らしたり、女房たちに謎かけをしたり……。

表情豊かで生き生きとしています。

それを愛情と敬意を持って描き切った少納言の筆の冴え。

見事な連係プレーです。

あの世で少納言が定子に逢ったときには、

よくぞやり通したと、

お褒めにあずかったんではないでしょうか。

枕草子―付現代語訳 (上巻)

 

明日は『枕草子』~中の関白家篇~の予定です。

それではまた。

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