「耳なし芳一」「雪女」も収録。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)『怪談』

 

皆さま、こんにちは。小暮です。

今回はラフカディオ・ハーン小泉八雲)『怪談』を。

 

小泉八雲の代表作『怪談』

小泉八雲は日本文化の研究者。父親アイルランド人、母親はギリシャ人。幼少期をアイルランドの首都ダブリンで過ごしたといいます。来日後、日本人女性と結婚し、日本国籍を取得。東京帝国大学講師も務めました。

「怪談」は日本に関する研究をまとめた一冊。八雲は日本についての本を何冊も出していますが、八雲といえばやはり怪談なのでは。ほかの怪談作品集としては「骨董」があります。

八雲自身、生まれついての怪談好きだったとか。アイルランドといえばケルトと妖精の国というイメージがありますが、幼いころをこの土地で過ごした影響もありそうです。

ちなみにイギリスの作家リットンが書いたホラー小説「幽霊屋敷」がお気に入りだったといいます。この小説についてはこちらの記事で書いています。

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おなじみの怖い話を収録

耳なし芳一のはなし」「雪おんな」など、有名な怪談が収録されています。そうかと思えばあまり聞いたことのないような物語もあり、こんな話もあったのかと新鮮に読めました。

後半は蓬莱や日本における虫の位置づけを考察したりと(蟻についてはもう日本は関係ないかも)、研究書というのもわかるかんじです。印象に残った話について少し書こうと思います。

耳なし芳一のはなし」

小学生のときに読んで、ものすごく怖い思いをした記憶が。

下関の阿弥陀寺に住まう琵琶の名手・芳一は、平家の怨霊に魅入られて、夜な夜な壇ノ浦のくだりを墓場で演奏させられるようになってしまいます。芳一の異変に気づいた寺の和尚が、芳一の全身に経文を書きつけ、怨霊から守ろうとしますが、耳だけ書き忘れていて……。

失った耳から、首筋に流れ落ちる生温かいもの。翌朝、体を朱に染め端座する芳一を和尚が見つける場面は、やはり凄惨ですね。

「雪おんな」

怖いけれども、神秘的で美しい話です。

森からの帰り道で吹雪にあった、木こりの茂作と弟子の巳之吉。二人は川辺の小屋に逃げ込み、吹雪を凌ごうとします。寝静まった夜、巳之吉がふと目を覚ますと、見知らぬ白い女が忍び入り、茂作に息を吹きかけていました。女は巳之吉を見逃し、去っていきますが……翌朝、茂作は冷たくなっていました。その後、巳之吉は美しい女と出会い、所帯を持ちますが……。

なんといっても前半、小屋に忍び込む雪おんなの、魔性の美しさですね。怖いんだけど、目をそらせずに見入ってしまいそうな……。ちょっぴり遭遇してみたい気がします。たぶん見逃してくれないだろうけど。

「かけひき」

これは知らない話でしたが、なかなかすさまじかったです。

とある武家が、罪人を庭で斬首しようというときに、恨み言を述べる罪人に「首がとんだら、どうじゃ、その飛び石を噛んでみせい」というのですが……。

首って飛ぶものなんですね……。興味深いのは、八雲の解説。日本では強い恨みを残した人間は死後に災いをなすと信じられているという意味のことが書かれていていました。ほかの話でも、誰かの身代わりに命を投げ出すという信心を珍しがっていて、異文化圏の人々からするとこういうのが不思議なんだなと。別の角度から日本を見るのは面白いですね。

 

それから、ストーリーそのものではないんですが「ろくろ首」には驚きました。ろくろ首って、首が伸びるんだとばかり思っていましたが、そうではなく、首が飛ぶようです。もしかしたら地域差でしょうか。ちなみに甲斐(現在の山梨県)の山奥での話。

 

怪談ごとに地名が

耳なし芳一のはなし」は山口県下関、「雪おんな」は武蔵の国(現在の埼玉県)など、どの土地の話なのかが書かれているのも面白かったです。

伊香保温泉の宿ではお貞という女性の生まれ変わりが出たそうだし、東京・赤坂の紀の国坂にはむじな(のっぺらぼう)が……。

ゆかりの土地に足を運ぶことがあったら、怪談に思いをはせて楽しめそうですね。

 

にじみ出る八雲の怪談愛 

八雲は生まれながらの怪談好きだったそうですが、読みながらさもあらんというかんじがしました。

こう情趣たっぷりに書いてあって、怖さの中にも人の思念や、はかない美しさがあります。怪談愛が隠せない気が。

訳はおなじみ平井呈一氏。その解説によると、八雲は怪談にも人の情を求めたようです。好きだと、こだわるポイントがありますもんね。

 

まとめ

おなじみの怖い話を文学作品として楽しめます。おなじみでない話も多いですが、こちらも面白いです。八雲の日本愛、怪談愛に注目するのも一興かもしれません。

 

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