食わず嫌いに読んで欲しい。実は面白い『枕草子』2
皆さま、こんにちは。グレコです。
今日は昨日に引き続いての『枕草子』であります。
初っ端から2回にまたがるとは思わなんだ。
さて今日は、枕草子における私のお気に入りエピソードの二つ目。
だいぶ偏ったチョイスのような気がしないでもないですが、
いってみます。
あらすじと解説・前半
『大納言どのまゐりたまひて』
これは清少納言の女主人である中宮定子の兄、伊周大納言のお話。
伊周と書いて『これちか』と読みます。
伊周は若い頃から漢学の才に秀でた人物で、
妹、定子の夫である一条帝に漢詩の講義をしておりました。
このとき、伊周19歳。既に一児のパパ。
一条帝13歳。7歳で即位したので既に在位5年。
定子16歳。少納言27歳。
推定ではありますが、みんなものすごく若いんです。
***
伊周は講義に熱が入るあまり「いつものように」深夜になってしまい、
帝は柱に寄りかかってうつらうつら、
定子はかろうじて起きているけれども実に眠たげ。
女房たちは几帳や調度品の陰に隠れて寝入っている。
最後の一人の少納言、女房全滅というわけにもいかず、こらえているがつらい。
そしたら、「丑四つ(午前三時半)」と時を告げる声がした
(こういう職業の人がいる)。
「もう夜も明けちゃいますね」とうっかり言ってしまったら、
伊周の耳に入ったらしく、
「今更お休みなさいますな」と言われて、帝がとばっちり。
***
その後飛び込んできた鶏に、伊周が気の利いた漢詩の一節を吟じるというのが、
この段の見せ場なのでしょうが、
個人的には「今更寝るな」という伊周の一言に笑いが込み上げます。
ただ、笑い話としてならいいのですが、
たぶんその場にいてこれを言われたら、
そうとうキツイでしょうね……。
史実では、伊周は一条帝の不興を買ってしまっているので、
まさかこれが……と邪推してしまう。
あらすじと解説・後半
さて、後半は打って変わってロマンチックです。
***
帝の元に残る定子の傍を辞し、少納言は局に帰ろうとします。
すると、伊周が気づいて、少納言を送ってくれることになります。
「こけるなよ」と言って、少納言の袖を引く伊周。
夜空には有明の月。
月に気づいた伊周は、また情景にぴったりな漢詩を吟じます。
大喜びする少納言。
***
伊周は大変な美男子だったそうで、若くして栄達したのもあり、
当時の宮廷のアイドルのような存在だったそうです。
あの光源氏のモデルの一人だとも言われています。
梅壷(定子サロン)にとって誇らしい存在だったのは想像に難くなく、
史実と併せて考える
但しこの伊周大納言。
失脚後は見る影もなくなってしまい、
この失脚のせいで栄華を極めた中の関白家は失墜、
定子は苦難の宮中生活の末に24歳で世を去ります。
枕草子には、
明るくお茶目な姿ばかりが描かれている中宮定子ですが、
その運命は過酷で、
当時の歴史書など読んでみるとガックリきます。
定子、伊周に限らず、中の関白家の人々の
華やかで機知に富んだ遣り取りを、少納言は多く書き留めています。
彼らはあくまで朗らかで楽しげに描かれています。
枕草子は定子が世を去った後も書き続けられましたが、
その不幸については一切触れられていません。
少納言の定子への想いを推し測ると、
とても切なくなります。
ものすごく長くなってしまった。
枕草子の好きな段なんて山ほどあるので大変。
定子、道隆、行成の話もみんな面白いんです。
枕草子―付現代語訳 (下巻)
明日は、あべこべになってしまいましたが自己紹介の予定です。
それではまた。
15.8.28. 一部修正
一部の表現を修正しました。内容は変っていません。