ヴァンパイア物の最高峰。やはり名作だったブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』

 

皆さま、こんにちは。小暮です。6月です。

今回はブラム・ストーカー著『吸血鬼ドラキュラ』を。19世紀イギリス怪奇小説をご紹介したときにもちらりと触れていましたが、ようやくの読了となりました。

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名作『吸血鬼ドラキュラ』

物心のついている人なら皆知っているだろうと思われるドラキュラ伯爵。「ジキル博士とハイド氏」や「フランケンシュタイン」と同じように、有名すぎてかえって読まないホラー作品だといわれています。

アイルランド出身のブラム・ストーカーの著作で、1897年に出版されました。

トーカーはアイルランド出身の作家レ・ファニュの作品から影響を受けて、ドラキュラの執筆にとりかかったといわれます。ドラキュラ誕生のきっかけになったレ・ファニュの作品についてはこちら。

glleco.hateblo.jp

ちなみにドラキュラ伯爵を追い詰める主人公ヴァン・ヘルシング教授のモデルは、東欧の吸血鬼信仰の取材に協力した、ブタペスト大学のアミニウス・ヴァンペリ教授だといいます。

『吸血鬼ドラキュラ』のあらすじ

それでは「吸血鬼ドラキュラ」のあらすじを――。

***

イギリスの弁理士ジョナサン・ハーカーは、トランシルバニア地方にある古城ドラキュラ城を訪問する。城主のドラキュラ伯爵はロンドンに赴く計画を立てていて、土地購入の手続きのためにジョナサンを呼んだのだった。

途中、地元の人々に十字架を渡されたり、鬼火や狼の群れの中を馬車で進んだりと、奇妙な道のりをたどりながらジョナサンはドラキュラ城にたどり着く。

出迎えたドラキュラ伯爵は、広大な城に一人で住んでいるようだった。手続きを進める間、ジョナサンは城に逗留することになったが、伯爵は夜にしか姿を現さない。日がたつにつれ、ジョナサンは自分が城に閉じ込められていることに気がついた。

逃げ出そうと試みるが、三人の魔物じみた女たちに襲われかけたり、伯爵に感づかれたりと、神経をすり減らす日々が続く。伯爵はイギリスへ旅立つ準備を進め、ついに礼拝堂からたくさんの箱が人足によって運び出された。

取り残された自分は女の魔物たちの餌食になると感づいていたジョナサンは、逃げ出す覚悟を決める。ドラキュラ城は絶壁の上に聳え立っていたが、いちかばちか絶壁を伝い降りることにしたのだった――。

――一方、イギリスでは婚約者のミナ・マリーがジョナサンの帰りを待ちわびていた。彼女は友人のルーシー・ウェンステラの世話をしていた。美しいルーシーは三人の男性に求婚され、その中の一人アーサー・ホルムウッドとの結婚が決まっていた。

二人が滞在していたホイットビーの町に、難破船が漂着する。もともと夢遊病の気があったルーシーはその日を境に様子がおかしくなり、だんだんと具合が悪くなっていく。

ちょうどその頃ミナのもとに、ブタペストの病院から、病気で倒れたジョナサンを入院させているという手紙が届いた。駆けつけたミナが見たのは痩せ衰えて生気を失ったジョナサンの姿だった。

ルーシーの求婚者の一人で、弱っていく彼女を診ていたセワード医師は、その病状に不審を抱き、恩師のヴァン・ヘルシング教授に協力を仰ぐ手紙を出した。応えて訪れた教授はルーシーを診察するうちに、或る存在に気づく――。

***

冒頭のドラキュラ城のパートでは、次第に伯爵の異様さが明らかになり、じりじりとした怖さを味わえます。満月の中で蝙蝠と見まがう魔物が飛翔するシーンは、ヴァンパイア物ならでは。

基本的に個人の日記という形式で、複数の登場人物の視点でストーリーが描かれます。物語に厚みが出ると同時に、先が気になる展開に。(「ハンプステッド怪談」など途中で挟みこまれる新聞記事も映画的で面白いです。どうやらストーカーは舞台を意識した模様)

特に終盤は疾走感があり、盛り上がります。

吸血鬼のお約束が満載

作中には吸血鬼のお約束がいくつも登場します。

霧に姿を変え、蝙蝠や狼を操る不死者(ノスフェラトゥ)。生き血を吸われた者は、死後に自らも吸血鬼と化してしまいます。ニンニクや十字架などの聖なるものに弱く、退治するときは金貨をくわえさせる。

怪奇モノなので、なぜそうなるのかという原理を考えてはいけませんね。なぜと思ったら、超常現象だからというのが答え。

吸血鬼は美しい?

吸血鬼というと美貌の持ち主というイメージがあります。レ・ファニュが描いたカーミラは華やかな美女です。

トム・クルーズが主演した「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」という映画があるのですが、トム・クルーズはとても美しくヴァンパイア役が似合ってました。共演のブラッド・ピットはちょっと違うような……。子役のキルスティン・ダンストが可愛らしかった。

それから、漫画の「ポーの一族」。エドガーもアランも美しい少年です。儚いメリーベルも美少女で、むしろ一族には美しい人しかいなかったような。

くだんのドラキュラ伯爵といえば、赤い目をした鷲鼻の老人です。途中で若返るのですが、それでも美貌ではないですね。怪物というのを強調した容姿になっています。

(海外ドラマの「トワイライト」はなんとなく見なかったですね。勘で回避したとしか言いようがないのですが。どうなのでしょう?今さら気になってきます)

見所は吸血と退治のシーン

イギリスの日常生活の中の異変がもっとも多くのパートを占めていて、グロテスクなシーンはあまり出てきません、数少ない吸血と退治のシーンが非常に衝撃的です。

棺桶の中に横たわる吸血鬼は生きて眠っているかのような美しさです。しかも、生前を知っている場合もあるわけで……それに、杭を打ち込むなど、だいぶ過激なことをしなくてはならない……そこらへんの人々の葛藤もよく描かれています。

吸血シーンは血まみれで扇情的。

ヴァンパイア物といえばコレです。

まとめ

 有名すぎて読まないのはもったいない作品。自分の長年ももったいなかった……。「吸血鬼ドラキュラ」は日本では1970年代に翻訳され、当時ブームとなったといいます。当時の翻訳を手がけた平井呈一氏訳がこちら。Kindle版はないようです。

今本を読むならKindle unlimitedなのか……時代はどんどん進みますね。

 

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