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世にも美しいヴァンパイアの物語。シェリダン・レ・ファニュ『吸血鬼カーミラ』|19世紀イギリス怪奇小説

 

皆さま、こんにちは。小暮です。

今日はシェリダン・レ・ファニュ『吸血鬼カーミラ』についてです。

レ・ファニュはアイルランド出身ですが、19世紀怪奇小説の主たる担い手であり、ブラム・ストーカーをはじめ、イギリス文学界に大きな影響を与えていることから、今回ご紹介することにしました。

因みに、『吸血鬼ドラキュラ』のほうは間に合いそうにないので、先々で改めて書くことにしたいと思います。

 

繊細な怪奇作家レ・ファニュ

ケルト文化が色濃く、妖精伝説などでも知られるアイルランド。レ・ファニュはこのアイルランドの首都ダブリンで、貴族の子として生を受けます。

怪奇小説を得意とし、『吸血鬼カーミラ』は最もよく知られた作品の一つです。東京創元社より刊行の同書は表題作を含め全7作品を収録。非常に繊細な表現が印象的で、収録作品の中では『シャルケン画伯』も幻想的で美しく、心に残っています。また『白い手の怪』も王道の幽霊譚として楽しめました。

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少女とカーミラ~擬似恋愛としての吸血~

『吸血鬼カーミラ』は文字通り女性吸血鬼の物語で、このタイトルのせいで登場する少女が吸血鬼であることは自明の理。接近する彼女に戸惑いながらも拒絶できず、具合の悪くなっていく主人公をもどかしく思いながら読み進めることになります。

主人公は幼い頃、一度カーミラとの邂逅を果たしており、このときも襲われそうになるのですが、咄嗟に泣き叫んで事なきを得ます。しかし、成長した主人公のもとに、事故を装って再びカーミラが接近。

食べ頃になるのを待っていた、というところでしょうか……。

カーミラは自身の食欲とそれが満たされる喜びを主人公に囁きかけるのですが、これは明らかに同性愛が意識されています。淑女にはあるまじき過激な愛情表現と取れる言葉たちは、その実、食事の話なのだからとても怖い……。

 

美しく華麗な正統派・吸血鬼譚

カーミラは美しく、少女である主人公も美しく、華麗な絵が目に浮かびます。カーミラはしょっちゅう主人公を抱き寄せ囁きかけるので(美味しそうという意味ですが)、レ・ファニュの繊細な筆致も手伝ってとても華やかです。

後半はカーミラの真実を探る展開になりますが、悠久の時を変わらぬ姿で過ごしていること示す肖像画や、血だまりの棺に美しいまま横たわる様子など、正統派の吸血鬼譚としての要素が余すところなく詰め込まれており、その後の吸血鬼を題材にした作品に多大な影響を及ぼしたというのも頷けます。

まとめと感想

吸血鬼譚として大満足できる内容です。ヴァンパイア好きの人におすすめ。そのほかの作品も怪奇小説として完成度が高く、こうした世界観が好きな自分にとっては心行くまで楽しめる一冊でした。レ・ファニュ作品は、日本語訳が多いとはいえないのがとても残念です。もっと読みたくなります。

 

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