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ほろ酔いの幻想大学生活綺譚。森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』

 

皆さま、こんにちは。小暮です。

今回は森見登美彦著『夜は短し歩けよ乙女』を。

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 笑って泣ける『夜は短し歩けよ乙女

表紙イラストのイメージが強く、読みながらずっとあの絵を思い浮かべてしまいます。主役の黒髪の乙女はとても可愛い。

大学生なのに小学生みたいな思考が気になりますが、まあご愛嬌。そして意外にお酒に強い。

同じ大学の先輩である主人公は、黒髪の乙女に想いを寄せながらも声をかけられず、"ナカメ作戦"を決行しますが……ナカメ作戦とは、「なるべく彼女の目に留まる」作戦のこと。

脳内では冗舌な先輩。淀みない大袈裟な語り口が面白いです。いや、本人にとってはものすごく大きなことですが、彼女と仲良くなれるかどうかがかかってるので。

シャイとボンヤリなので、なかなかなんともならない、焦れる展開です。ボーっとした彼女は助平な東堂さんにまったく警戒心がなかったり、謎の老人・李白さんと謎の酒・偽電気ブランの飲み比べ対決をやってしまったり……そういうところが魅力なんですが、何かと気が気じゃないでしょうね。

声がかけられなくて、とにかく近くにいようとする先輩。ユーモアの中の悲哀も見てとれます。応援したくなる。そしてちょっと泣ける。

 

懐かしき街・京都が舞台だからこそ

舞台が京都というのがいいですね。

京都は歴史ある文化的な土地柄で、通りを歩いていると忽然と神社仏閣が現れますし、なんでもない橋を歩いているつもりで「あ、五条大橋義経と弁慶が対決した)!!」ということも。

「ありそう」「いそう」という気分になります。

大学が多く、美大も多いので、自由で開放的な雰囲気もありますね。ちょっとゆるくても許されそう。

実は昔、ちょっとだけ京都にいたことがありまして、読んでいるとしみじみしてきました。こんな感じでは全くなかったのに、そこはかとなく懐かしい不思議。

 

夜は短し歩けよ乙女』と大学生活という夢物語

大学にはもともと少し変な人がいるイメージです。

願掛けでパンツを履き替えない人も象のお尻のオブジェを作る人もサークルの飲み会で伝統の妙な踊りを踊ることもそりゃあいるでしょうあるでしょう……というイメージ。そういう場所であれと。

こんな夢想はノスタルジーの産物でしょうか。今はもっと現実的なのかもしれませんね。

夜は短し歩けよ乙女」は夢物語で、やはりそこがいい。だからこそ時代を超越できるんでは? という気がします。

 

夢のあと

学生時代は期間限定。学生だったあの人もこの人も社会人。先輩も黒髪の乙女も普通の大人になっているというふうに考えていくと全く夢がないですね。

浮かれていても、夢から覚めるが如く、シャキっと大人になるのが賢いのでしょうが、あの頃の面影をとどめた大人として羽貫さんがいるようにも思えます。

 

まとめ

京都の街と大学で、先輩と黒髪の乙女が繰り広げる、ほろ酔いの”夢の宴”といった物語です。

記憶、そして時代は結晶化しておきたいですね。時はどんどん流れて消える。夜は短し。生も短し。

 

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