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生きづらい魂への愛情表現。嶽本野ばら『エミリー』

 

皆さま、こんにちは。小暮です。

今回は嶽本野ばら著『エミリー』について取り上げたいと思います。

 

嶽本野ばら氏の作品についてざっくりと

映画化もされた「下妻物語」が有名な作家さん。「鱗姫」という作品でも、ロリータファッションを扱っていて、ファッションにこだわりがある印象です。

大正時代をテーマにした本に寄稿されているのを何度かお見かけしたのですが、きちんと読んだのは「エミリー」のみ。こちらもやはりファッションへのこだわりが伺えます(小暮はファッションわかりません……)。

表題作のほか短編の「レディメイド」と「コルセット」も収録されています。「コルセット」も思うところの多い作品。私には絶望的な話のように思えました。とりあえず生きていけそうならいい……うーん、主人公の状況からするとそういう段階なのでしょうか。

中編の「エミリー」は良かったです。

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疎外感を感じている少年少女の物語

「エミリー」は一言でいうと、疎外感を感じている少年少女の物語です。

 主人公は、”エミリー”とあだ名され、学校でいじめにあっている少女。お気に入りの”お洋服”を着て原宿の街にいることが心の慰めでしたが、雑誌に「エミリー」という名前で写真掲載されたことを学校で知られてしまいます。それがそのままあだ名になった上に、いじめも激化。そもそも幼いころに性的に見られた経験があり、心に傷を負っています。

エミリーに原宿で声をかけてきたのが同じ中学の先輩でした。彼は同性愛者ゆえの苦悩を抱え、やはり学校でいじめにあっていました。

二人はラフォーレ原宿の前で会うようになり、学校のごみ焼却炉の裏で一緒に昼食をとるようになります。

二人が出会って、同種の魂の存在を知り、”番う”までが描かれています。

 

彼らの未来

二人ともとても純粋です。過去の体験も、自分自身も、ずっと抱えていかなければいけないものですから、ずっと生きづらく、大人になってからも苦労するのかもしれません。でも。

「この残酷な世界に生み落とされたのは、きっと貴方に出逢う為だったのですよね」

絆を紡ぐことができた経験は、大きな支えとなりそうです。

傷だらけで、この先も持て余すかもしれない心を、彼らが疎まないでいられそうなことに希望を感じます。自分自身から目を背けてしまったら、きっと違和感を抱えたまま一生を終えてしまうのではないかと思うので。

”お洋服”への偏愛、独特の文体、性描写が多め……と、苦手な人も多いかもしれないですが、おそらくそれ以上の魅力がある作品。生きづらさを感じている”魂”への愛情が感じられます。

 

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