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グロテスクと純愛と。異様な魅力の江戸川乱歩『孤島の鬼』

 

皆様、こんにちは。小暮です。

今回は江戸川乱歩著『孤島の鬼』についてお送りします。多少ネタバレしていますので、ご注意ください。

 

乱歩作品のイメージ・・・

長年、手を出せずにいた乱歩作品。あらすじだけ知っているものも幾つかありますが、テーマだけで十分強烈です。なかなか読める自信がありませんでしたが、逡巡した挙句ついに思い切って手に取ったのが『孤島の鬼』。期待を裏切らない強烈さでした。

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『孤島の鬼』のあらすじ

そんな入りのドキドキ感も個人的にはエンターテイメントだった『孤島の鬼』ですが、結論からいうと、序の口だったということに……。

若くして白髪になった主人公・箕浦金之助が、ある体験について語り始めるところから物語は始まります。

平凡な人生を送っていた箕浦は職場の女性・木崎初代と恋に落ち、婚約します。が、箕浦の学生時代の先輩・諸戸道雄が突然現れ、初代に熱烈な求婚を開始。諸戸は同性愛者で、箕浦はすぐにその真意を悟ります。初代は箕浦との関係は知らずに諸戸の求婚を拒んでいましたが、事態が進展しない中、密室殺人の犠牲者となってしまいます。孤児だった初代はひとつの系図を受け継いでいました。それを手がかりに、箕浦は初代の死の真相を追って、ある島へと向かうことになります。

 

閉ざされた島の”鬼”

謎に満ちた展開に引き込まれる序盤ですが、島で明らかになる事件の真相は非常にグロテスクで衝撃的です。

なんといったらいいかわからないので、ある身体的特徴を持った人としますが、こうした人々がかつて受けた仕打ちというのは、実に惨いものだったでしょう。以前ご紹介した寺山修司著「幻想図書館」でも、見世物小屋について書かれた章があります(記事では触れていませんが)。

彼らの怒りは、暗く歪んだ形で発揮されます。読んでいて胃が悪くなるほどです。けれど、それすらも乱歩の創作にとどまらず、歴史的事実を内包しています。これほどまでに陰惨な行いが、現実と紙一重なのが……こう、背筋が寒くなる。

彼らが鬼になるしかなかった事情も汲み取れます。それが余計堪えますね。単純に非難できたら楽だろうけれど、そうはさせてくれません。

あまりこの人たちが特別だとは思えない。いわゆる紳士淑女も、追い詰められ仮面をはがされたことのない、幸福な鬼なのかもしれません。あるいは手を汚さないだけの鬼なのかも。

 

一服の清涼剤としての純愛

胃を直撃するほどグロテスクな物語の中で、一服の清涼剤のように爽やかだったのが純愛です。異性愛、同性愛ともに出てきますが、どちらも純粋。存在感は同性愛のほうが強いですね。諸戸の思いは切ないです。箕浦も変わっているなあと思いましたが。この人、異性愛者ですが、諸戸への嫌悪感もあまりないんです。こういう相手のほうが思いが募るのでしょうか。

 

まとめ

人は清濁併せ持つといいますが、「孤島の鬼」では人の清いところも汚濁したところも、一度読んだら忘れられない強烈さで描かれています。吐き気をもよおしながらも惹きつけられる異様な魅力を持った作品です。

 

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