文化人は博識、というより雑識?寺山修司『幻想図書館』

 

皆さま、こんにちは。小暮です。

今日は寺山修司著『幻想図書館』について。

 

寺山修司という人が「寺山修司の本棚」なんていうブログをやっていたとしたら

「髪に関する面白大全。ブルック・アダムス『髪』」

「眠られぬ夜の拷問博物誌。ローラン・ヴィルネーブ『拷問博物館』」

なんていう記事が並ぶのだろうか。

と、やや手前ミソな空想をするのも面白かった本書です。著者がセレクトした書物を紹介する内容で、まあ、よくもこれだけと思うくらい奇書が揃っていました。

ジェナルド・ドナルドソン著『蛙』では、『少年少女のための悪趣味な本』から抜粋されたというデンマーク人冒険家による日記が紹介されているのですが、蛙に乗ってアンデス越えを目指す筆者の悪戦苦闘ぶりが記されており、予想通りまったく報われません。

かと思えば『オズの魔法使い』に込められたアメリカン・スピリットを考察し、世界各地に言い伝えが残るという靴の民俗学に思いを馳せ、果ては狼男をめぐって伝説や実話、病理説まで網羅。実にマニアックです。

またアフロ・アメリカンのカルチャーを特集した『the black book』の章では、ボクサーやブルースを通じて彼らへの素直な憧れが感じられ、アメリカ文化に影響を受けた、昭和という時代の側面が伺えるようでした。

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さて、寺山修司という人は1970年代に一世を風靡した人物なのだそうですが、歌人にして劇作家であり、ラジオやテレビの脚本も手がけ、果ては映画監督も務めており、また演劇実験室『天井桟敷』を率いてもいました。

私がこの人を知ったのはとある新聞記事でした。そこに紹介されていた舞台の原作者だったのです。因みその舞台とは『毛皮のマリー』。主演は美輪明宏さんでした。戯曲が書籍化されており、そのうち読んでみたい作品の一つです。

幻想図書館』を読んでみて、寺山修司という人が興味を持つジャンルの広さに大変驚いたのですが、なるほど、一世を風靡するほどのアウトプットは、その前に膨大なインプットがなければ成し得ないことなのでしょう。

絵本作家エドワード・ゴーリーもインタビューでその博識ぶりを披露していますが、

glleco.hateblo.jp

ゴーリー然り、寺山修司然り、文化人って学校のお勉強では習わない雑学の分野について精通しています。しかも、その知識のすべてを血と肉にして、独自の視点から語り、人を惹きつける……。

一流、達人など、物事に精通した人の妙技は心を打つものですが、こういう極め方もあるのだなと思わせる小気味よさでした。まあ、常識的に考えて拷問だの狼男だの、小気味よくはありません。とことんマニアックであるという点が小気味よいと思うのです。私見。

 

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