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仕組まれた運命に戦慄。華やかな和のホラファンタジー小野不由美『東亰異聞』

文学

 

皆さま、こんにちは。小暮です。

今日は小野不由美著『東亰異聞』についてです。

 

著名な作品が多い小野不由美さん

小野不由美さんといえば、2013年に山本周五郎賞を受賞した『残穢』や、アニメ化もされた『十二国記』などの作品が知られています。『残穢』は怖すぎて家に置きたくない本とまでいわれていたので、ホラーが苦手な私としては手が出せずにいる作品です。ゴシックホラーや洋物はわりと平気なのですが、現代が舞台の和物はどうにもダメなんですよね……おまけに本を置いておくのも嫌ってどれだけ怖いのだろう……。

十二国記』はアニメが好きで、原作のほうも「月の影 影の海」は所有しています。真っ直ぐで自立心の強い女性へと成長する陽子がとても好きでした。山田章博さんの美しいイラストも素敵です。

脱線してしまいましたが、今回は『東亰異聞』を取り上げます。

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「東亰」で起こる和のホラーファンタジー

 明治時代をモチーフにしたファンタジー世界が舞台です。史実に近い点も多く、パラレルワールドであるというのがタイトルの「東亰」にも込められているように思えます。

東亰の街には魑魅魍魎が跋扈し、人ならぬものによると思しき事件が多発。火炎魔人、闇御前、人魂売りといった異形の者が夜の帝都を徘徊し、都民を恐怖に陥れます。新聞記者の平河は、知人で大道芸師の顔役である万造ともに事件を探りますが……やがて、然る公爵家のお家騒動に巻き込まれる羽目に。

 和物ホラーファンタジーですね。途中、語り部のように現れる黒子と浄瑠璃人形との掛け合いも雰囲気たっぷりです(実はただの語り部などではないのですが)。

 

公爵家一門の登場からミステリーに

公爵家の面々が出てきてからは、ホラーファンタジーというよりもミステリーの様相を帯びてきます。鷹司公爵家の常(ときわ)こと常熙、異母兄の中畑直(鷹司直熙)、輔といった一族の男性の人物像は華やか、というと聞こえがいいですが、やや漫画的です。主人公的なポジションにいる平河や相棒の万造がリアリティのある性格づけなので、余計に目立っている気がします。

公爵家の家庭の事情は複雑で、嫡子がいないために(子供たちは全員妾腹)跡継ぎを巡って不穏当な気配が立ち込めています。さらに彼らを巡る一癖も二癖もありそうな女性たち、母親たち、忠実な従者……一体誰が、どういった思惑で動いているのか……。

序盤の怪奇事件が立ち続けに語られるあたりは、雰囲気たっぷりではあるものの、ややスピーディーさに欠けるので、公爵家一門が登場してから物語がようやく軌道に乗って動き出す感があります。

 

望まぬ争いと仕向ける呪い

公爵家の子弟たちは皆とても真っ直ぐな性格です。お家騒動は彼らが望むものでは全くないのですが、真面目だからこそ背負わずにはいられないのでしょう。

しかし、彼らの運命は、仕組まれたものでしかなく……。

最後に明らかになるのはあまりに残酷な事実でした。ゾッとするほど暗い負の感情がそこにはありました。人の思いがこじれて呪いになる……それをまざまざと見せつけられたように思います。

正直、途中までは夜桜見物のような気分で、多少物見高く華やかな和物ファンタジーを楽しんでいたのですが、最後にガツンと重いのがきました。この手応えが、暗い残響が、この物語の核なのだなと。

まとめと感想

 合う人と合わない人がいるかもしれません。個人的には「東亰」が舞台でなくともよかったのではという気もします。ファンタジー要素はそのままに、明治東京で繰り広げられるホラーミステリーとしても充分通用しそうです。

話としては、よく練られていて、特に公爵家の不幸の元凶がショッキングで良かったです。文明開花に湧く帝都の賑わいや趣ある建造物も物語に華を添えています。

 

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