マニアックだけどおすすめ。ブラックウッド『秘書綺譚』&マッケン『白魔』|19世紀イギリス怪奇小説

 

皆さま、こんにちは。小暮です。

今日はブラックウッド『秘書綺譚』&マッケン『白魔』について書いてみたいと思います。

 

アルジャーノン・ブラックウッド『秘書綺譚』

サイレンス博士シリーズなどで知られるイギリスの怪奇作家ブラックウッドの著作。ショートハウス・シリーズである表題作のほか、バラエティ豊かな作品群が収録された珠玉のホラー短編集です。

『秘書綺譚』は、ジム・ショートハウスという名の青年が主人公で、このシリーズは同書に合わせて4作が収められています。著者は若くしてカナダに渡り酪農会社を経営するも破綻、アメリカ・ニューヨークで新聞記者になり、その後富豪の秘書を務め、イギリスに戻ってホラー作家に転身するという異色の経歴を持ち主なのですが、ショートハウス・シリーズのうち2作はアメリカ時代の経験が生かされているように思えます。

表題作は、主人から書類を託されとある屋敷を訪ねた秘書の物語です。主人と敵対関係にある屋敷の主はなにやら腹積もりがありそうで、おまけに従者も胡乱と、明らかに危うい状況の中、秘書はその謎めいた屋敷に泊まることになってしまいます。その後は期待を裏切らないスリリングな展開です。

このほか、オーソドックスな幽霊譚『空家』『約束』、ほのぼのとした妖精譚『小鬼のコレクション』、芸術家の苦悩を描いた『野火』など、雰囲気の異なる物語が収録されています。ブラックウッドって、すごくプロっぽいですね。プロの作家なんですけれども、つまりテイストの異なる話を自在に書けるといった印象です。話にあまり鬱々としたところがなく、怖さはもちろん感じるのですが、主人公の苦悩の投影としての怪奇といった解釈は当てはまらないと思いました。基本的に、真っ当な主人公が異常な怪奇現象に相対するという話運びで、怖さを楽しみながら読めます。

因みにブラックウッドが本格的に作家として活躍し始めたのは20世紀に入ってからなのですが、1899年にデビュー作を発表しているので、19世紀の作家に含めてみました。はっきりいって当てはまっていません……。

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アーサー・マッケン『白魔』

ブラックウッドとともに並び称されるイギリスの怪奇作家。この人は19世紀の作家といって差し支えないかと思います。同書では表題作のほか、中編の『生活のかけら』やいくつかの短編が収録されています。

 『白魔』は、とある少女の手記という形で語られます。裕福でありながら親との関わりの薄い孤独な少女は、乳母に手解きされ奇妙な言葉や儀式を覚えていきます。乳母と出かけた森で出会った「白い人」たちに、少女は夢中になっていきますが……。

 この乳母……明らかに胡散臭く、少女の教えられていることはマトモじゃないと、読んでいてハラハラしつつも当然ながら読者にはどうしようもありません。

話はズレますが、ヴィクトリア時代にはとんでもない成分が入ったものが万能薬として出回っており、乳母がむずかる子供を寝かしつけるために飲ませることもあったようで……(この本に詳しく出ています)。

つまり、このような質の悪い育児が横行していた時代なのです。アッパーミドルの家庭の子でもちゃんと育つかどうかは紙一重だったのかもしれません。同作の中でも、想像力豊かで世間知らずな少女が、それと知らず道を誤っていくさまが綴られています。

淡々と描かれていますが、ラストにはゾッとさせられます。ただ少女の手記という趣向なので仕方ないのかもしれませんが、稚拙な文章表現が多く、かなり読みづらく感じる点が残念でした。

ほか、『生活のかけら』は着眼点が面白い作品です。単なる夫婦の日常生活に見えて実は……という内容でした。短編から察するに、この作家は少女と民間信仰に強い関心があるのかな、という気がします。

ブラックウッドとマッケンの接点

この両者には意外な接点があります。

それはともに魔術結社「黄金の夜明け団」のメンバーであったこと。入団時期もほぼ同じなので、面識があったかもしれません。因みに、創始者はウィリアム・サマセット・モーム著『魔術師』のモデルとなったアレイスター・クロウリーです。

ブラックウッドとマッケンはどちらも魔術を扱った作品を書いていますが、前者はアカデミックな魔術を、後者は前述のように民間信仰を下敷きにした魔術を好んだのではないかという印象です。

まとめ

えー、この二人を扱うなら、19世紀にこだわらなくてもよかったかもしれません。なにしろ作風自体に新しい時代というものが感じられます。

光文社・古典新訳文書は、怪奇小説が多くておすすめです。

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