戦慄するからくりとシニカルなからくりと。エドガー・アラン・ポー『落穴と振子』『十三時』

 

皆さま、こんにちは。小暮です。

今日はエドガー・アラン・ポー著『落穴と振子』『十三時』について。

書評コンプチャレンジがちっとも進みませんが、一応、のろのろマイペースで読んでおります。

以下、ネタバレにご注意ください。

 

『落穴と振子』

宗教裁判にかけられた主人公は、有罪判決を受け、牢に囚われの身となってしまいます。そこで待っていたのは、陰湿な拷問の数々……。常に監視されながら、落穴に落ちそうになるのをあと一歩で免れ、振子の刃で切り裂かれそうになるのを危機一髪でかわし、ついには焼けた鉄の壁が迫り、落穴に落ちるか鉄の壁に焼かれるかの極限状態に陥ってしまいます。

落穴の底についてはあまり詳しい描写はされていないのですが、どうも水が溜まっているらしいというのは触れられています。主人公はこの落穴をもっとも忌み嫌うので……描写はないものの、彼は一度その内部を見ており、恐らくは、よほどの汚水だったのか、無惨な姿の先客がいたか。

どっちにしろ究極の選択です。

落ちるか。切り裂かれるか。焼かれるか。

どれがいいといわれてもどれも嫌。

どれが一番キライかという問いのほうが答えやすいですね。ちなみに私が読んでいてもっとも恐怖を感じたのは振子です。どれを選択するかでその人の個性が発揮されそうですね。

 

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『十三時』

森林太郎訳でございました。でも誰が訳しても「ポーだなあ」と思う文体です。

端的にいいますと、オランダのスピイスブルクという都市が大混乱に陥る話。この街は誕生したそのときから少しも変わっていないといい、市民は変わったであろう点を指摘されると不快感を示すような土地柄で、おまけにキャベツと古い時計だらけという奇妙な都市です。ここに外部から無法者がやってきて、時計の十二時の鐘を「十三時」まで打ってしまいます。あるはずのない時間を市民は受け止められずに、老若男女から果ては家畜の類まで混乱状態となってしまいます。

ポーが創造した都市の有り様には、作家の頭の中の箱庭世界を鑑賞するような面白さがあります。時計は本来人間の暮らしのために作られたものなのですが、ただの道具である時計が狂うことで人間も立ち行かなくなってしまうという、いつの間にか道具との逆転現象が起きている、紙一重で危うい文明社会を描き出しているようにも思えます。全体的にユーモアが感じられ、都市そのものが大きなカラクリ時計のような印象です。

 

以上、久し振りに読んでいて楽しめたポー作品でした。

 

チャレンジ報告

ポー作品の書評コンプを目指しています。これで15作品。

ゴーリー絵本も目指していたんですが、諸事情で厳しくなりそうです。ポーはのろのろでも達成できればと思っています。

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