エドガー・アラン・ポー『アモンティリャードの樽』『告げ口心臓』

 

皆さま、こんにちは。小暮です。

今日はポー作品『アモンティリャードの樽』『告げ口心臓』です。

*ネタバレ要素を含みます。ご注意ください*

 

『アモンティリャードの樽』

フォルティナートという知人に恨みを募らせる主人公は、

復讐のために一計を案じます。

それはワインに目がないという弱点を利用して、

フォルティナートを地下室の奥におびき寄せ

葬ってやろうというものですが……。

主人公が品評してもらいたい酒があると持ちかけると、

「アモンティリャード!」とフォルティナート。

この「アモンティリャード!」という科白を連呼するので、

フォルティナートの食いつきの良さがわかります。

「風邪気味なんて悪いからやめておこうか」

「別の友人に頼もうかなあ」などと主人公はわざと言ってのけ、

フォルティナートは見事に術中にはまってしまいます。

軽妙で、ユーモアさえ感じさせるやりとりの果てに待っていたのは、

残酷な結末……。

アモンティリャードはスペインの酒だそうですが、

フォルティナートはイタリア風の名前でしょうか。

この話の舞台はイタリア説とフランス説があるそうです。

にこやかなやりとりの裏にある主人公の悪意が怖い話です。

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『告げ口心臓』

ゴーリーがインタビューの中で触れていた作品。

結末をバラしたらもう読めない話というテーマでしたが

「じゃあ、このインタビューを聞いた人はもう『告げ口心臓』を読めませんね」

とインタビュアーが返していました……読みました。

自分は狂っていないと繰り返し主張する主人公。

ただ神経が研ぎ澄まされているだけだと……

彼はある老人をその目を理由に害します。

現場で主人公の耳にこびりついたのが心臓の鼓動。

その音は恐怖に慄く老人のものだったのか……しかし、

床下に埋めたなきがらからも、主人公を追い立てるように

心音が響きます。

 その耳にこびりつく心音は、老人のものではなく、

主人公自身のものなのでしょう。

罪の重さに耐え切れなかったというところでしょうか。

主人公が老人を害するのは、老人の眼のせいなのですが、

邪眼といって、古くから信じられている目にまつわる迷信が

影響したのだろうという指摘があります。

ランタンからのびた一条の光が、闇の中で、

老人の瞳だけ浮かび上がらせる場面があるのですが、

現実的には実現不可能なシーンでしょうが、

ゾクゾクッと怖くて印象的でした。 

 

注文の多い作家

(ポーは)あらかじめ計算したとおりに読まれたがっている。

そんなタイプであるならば、推理小説の元祖と目されるようになったのも肯けることだろう。

まず結論から構想し、そこまでたどり着くように仕組んで、読者をあっと言わせる。

もちろん最後の謎解きには、読む側の解釈による自由はない。

犯人は誰か。作者が指定した人物だ。ほかにはない。(訳者あとがきより)

 この本で日本語訳を担当した小川高義氏のあとがきが面白かったので抜粋。

文学とはこうあるべきという明確なヴィジョンを持っていたポーなので、

読者にもそれ以外の読み方は許さないという謹厳さは確かに感じられます。

そのこだわりの強さが名作を生んだという面もありそうです。。

チャレンジ報告

ポー作品の書評コンプを目指しています。

これで10作品です。

 

 

明日もポー作品の予定です。

それではまた。

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