ある朝、目覚めると、虫になっていた。フランツ・カフカ『変身』

  

皆さま、こんにちは。小暮です。

この3日間、不思議を扱った小説をご紹介しています。

ラストはフランツ・カフカ著『変身』について。

不条理な不思議がテーマです。 

 

カフカについて

20世紀前半に生きた作家で、保険局に勤めながら執筆活動をしていました。

夢幻的で不条理な作風で知られ、そのほとんどが中短編です。

生前の評価は大きなものではありませんでしたが、

世を去ってから再評価され、今では20世紀を代表する作家として知られています。

 

『変身』のあらすじ

ある日の朝、グレゴール・ザムザが自室のベッドで目を醒ますと、

彼は巨大な毒虫になっていた。

グレゴールは旅回りのセールスマンでいつものようにすぐに出かけなくてはならない。

時間になっても起きない彼を心配して、

家族や雇い主までも様子を見に来るが、

グレゴールが部屋のドアを開け、姿を現すと、

みんな腰を抜かしてしまった。

雇い主は家から逃げ出した。後を追おうとしたグレゴールは、

血相を変えた父親に追い立てられ、部屋に戻され、閉じ込められてしまう。

部屋の中で、グレゴールは食べ物の好みも、部屋の這いまわり方も、

どんどん虫のようになっていく。

彼はおとなしく真面目な青年で、自分の運命を悲しむが、

彼の家族も悲しみに沈み、敬遠しつつも、彼の世話をする。

やがて、ふとした拍子にカッとなった父親がグレゴールに林檎を投げつけ、

その林檎が傷口の中で腐り、重傷を負ったグレゴールはどんどん弱っていく……。

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『変身』の魅力

主人公が善良な青年であるということに尽きます。

巨大な毒虫に変身してしまったというのに、

のんびり、ぐずぐず、悩み込んでしまって、

話の舞台は家の中に終始し、全く大きく展開しません。

それはグレゴールがたとえ見かけが虫になったところで、

もともとの優しい人となりそのままであったことの何よりの証ですが、

非情な雇い主はもちろん、家族にも理解されない。

虫になってしまったという非現実が、

とても現実的な日常の中で描かれています。

 

まとめと感想

ある種の暗喩、そして問題提起のようにも感じられます。

カフカが実父との間に確執を抱えていたことを考えても、

そうした意識があったとするのは自然でしょう。

一方で、物語はどことなくユーモラスに語られ、

深刻な批判精神に基づいているとも……少なくとも

それだけがテーマであるという印象はありません。

もし、朝起きて、自分が虫になってしまっていたら?

変身ヒーローモノみたいに、カッコ良く有効活用できればいいけど、

現実はぐずぐず悩むだけかもしれない。

しかもヒトには戻れないし。

……悪夢……。

保険局に勤める真面目な人物が、

こういう風変わりな小説を書き続けていたというのも、

興味深いところです。

生前のカフカは業界内の注目株くらいの作家だったようですが、

今では20世紀の三大作家の一人に数えられています。

ここらへんの事情は、ポーと少し似ていますね。

不思議を扱った小説の連載は以上になります。

ありがとうございました。

 

次は9月27日更新予定です。

それではまた。

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+15.9.24. 一部フォント修正。