カレン・ウィルキンソン『エドワード・ゴーリー インタビュー集成 どんどん変に・・・』―ゴーリーの肖像―
皆さま、こんにちは。グレコです。
今日はカレン・ウィルキンソン編『エドワード・ゴーリー インタビュー集成 どんどん変に・・・』―ゴーリーの肖像―です。
愈々その人となりについて。
人物像
連載の初回でご紹介した奇抜なファッションに加え、
独特の、抑揚ある喋り方を、多くのインタビュアーが指摘しています。
少女のような裏声から低音までを上下し、やや芝居がかった口調でありながら、
アメリカ中西部地方特有の素朴な言い回しもしていたとか。
人柄は、シャイで友好的、仕事も大抵断らなかったといいます。
ゴーリーの絵本は、1970年代からじわじわと人気を博し始め、
ゴーリー自身も注目されるようになりました。
「メジャーにならないで」というメッセージをファンからもらったと、
ゴーリーは複雑そうに語っています。
恐らくは自分の作品を狭い枠でくくられることが不満だったのでしょう。
――自分は変だと思われるけれども、
意識的に変人を装ってもいる――
文化についてはジャンルも国境も越え、
多岐に渡って"むさぼるように"興味を持ち、
造詣も深いゴーリーの言葉は、ユーモアに富み聡明です。
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作品から見て、フランスの作曲家サティのような
とっつきにくく気難しい性格かと思っていたのですが、
意外にも、社交性のある穏やかな人物だったようです。
自分の言動についてよく心得ている冷静さも際立ちます。
アーティストとして
自身の制作活動に集中するため、勤めていた出版社を退社後は、
アイデアが尽きる心配はまったくなかったそうです。
名声や成功への執着はなく、自身の過ごしやすい環境で
創作活動を続けることを望みました。
友人に恵まれたゴーリー。
大学生だったときに小説家や詩人として名を残す友人を幾人も得ています。
また、ゴーリーの作品は、数は少なくとも良き理解者、熱心な支持者を得、
じわじわと人々に注目されるようになりました。
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才能もさることながら、やはり人柄ですかねえ。
我が強く情熱を前面に出すアーティストなら、
もっと短期間で派手に注目を集めるのでしょうが、
ゴーリーは真逆の人柄。
特に有名になることには抵抗があったようです。
絵とテキスト
線の多い画風のため、壁紙を書くのがいやになって、
数年間放置した作品があることも告白しています。
背景の描き方は映画の影響が色濃い。
偶に空白を背景に用いるのは日本美術の影響だそうです。
文章のほうは、
ノンセンスを志向。独自のノンセンス論を展開しています。
また自分の哲学はシュールレアリスムのそれだとも語っています。
ゴーリーは絵描きよりも作家だと自身を分析しており、
テキストのみ出来ていて絵をつけるのが追いつかない作品が
相当数あったといいます。
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絵よりもテキストに重きを置いていたゴーリー。
絵については職人的で、
アーティスティックな分野がテキストだという
感覚でいたのかもしれません。
作風
「残酷」「陰惨」との指摘を、ゴーリーはきっぱりと否定します。
曰く、日常にあるものを描いている、と。
ただ、読む人にショックないし少しの不安を与えたかった、
ともゴーリーは語っています。
またゴーリーの作品は、そうしたカテゴライズを超えて、
自由に創作されてもいます。
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ゴーリーのグロテスクな作品は、二つに大別できるように思います。
一つは古くからの教訓本を皮肉った作品。
こちらはどことなく痛烈な意図を感じさせます。
もう一つは、20世紀初頭のモノクローム映画の影響。
こちらは非常に冷静で、淡々と描かれています。
「形式」「様式」にこだわるという発言も繰り返していますし、
ゴーリー自身の経験や心情の投影というよりは、
そうした過去の作品にインスパイアされたものではないでしょうか。
まとめと感想
隠者のようなアーティスト。
私の憧れそのもののような生き様のゴーリー。
それでいて偏屈ではなく、人当たりはソフトです。
ただ、非常に繊細で、
人と距離を置きたがる傾向も見て取れました。
ゴーリーの「慎重な人生設計」に基づく「プライバシーの確保」については、
冒頭で編者が触れている点でもあります。
古来より、隠棲した賢者の試しは少なくありません。
現代の隠遁生活とは、ゴーリーのような生活なのかもしれません。
人にそれと悟られずに世間から一定の距離を置く……。
やり遂げるのは難しいと思います。
ゴーリーは強い意志の持ち主だったのでしょう。
つくづく羨ましい。
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さて、ここまで、複数回に渡り、
長々ゴーリーの人物像を探ってみましたが……
インタビューでよく嘘をつくというゴーリー(!)
……徒労に終わらないことを祈りたいです。
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尚、ゴーリーの略歴については割愛しました。
明日はエドワード・ゴーリー『エドワード・ゴーリー インタビュー集成 どんどん変に・・・』―ゴーリーの作品たち―の予定です。
それではまた。