カレン・ウィルキンソン『エドワード・ゴーリー インタビュー集成 どんどん変に・・・』―ゴーリーの文化的探求―
皆さま、こんにちは。グレコです。
今日はカレン・ウィルキンソン編『エドワード・ゴーリー インタビュー集成 どんどん変に・・・』―ゴーリーの文化的探求―です。
その幅広い文化への知識と探究心について。
ゴーリーとバレエ
ゴーリーはニューヨークシティバレエの常連客で、
リハーサルまで見に行くくらいの熱烈なファン。
振付師バランシンを信奉と言ってもいいくらいに支持していて、
彼の作品には、バランシンが振付けたバレエのポーズが
よく描かれています。
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バレエについてのインタビューは、非常に饒舌で、
嬉々として語っている様子が目に浮かびます。
そのときのゴーリーはアーティストではなく、ただのファン。
好きなものの話は止まらなくなるようです。
バランシンの大ファンなのですが、ロシア出身の彼は英語が得意でなく、
おまけにとっつきにくいので、ゴーリーはあまり話せなかったとか。
ゴーリーと文学
子供の頃に読んで影響を受けた作品は
『ドラキュラ』と『不思議の国のアリス』
ノンセンス詩で知られるエドワード・リアとともに
ゴーリー作品への影響を指摘されています。
好きな作家として、トロロップ、ジェイン・オースティン、
そして、日本文学に多大な関心を寄せ、
翻訳版で、あの長い物語を10回近く通読しています。
ゴーリーに言わせると、日本文学は書きすぎず、
読者の想像に補わせるとのこと。
間、余白の美といった、日本芸術のすべてに通じる精神が
ゴーリーの心を捉えたようです。
因みに嫌いな作家はヘンリー・ジェイムズとトーマス・マン。
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ヘンリー・ジェイムズは読んだことがないのですが、
執拗な描写――確かに。
日本人でも原文で読むなんて敷居が高く(ほぼ無理)、
現代語訳でも長すぎて(何しろ五十四帖)手に取るのを躊躇うのに……
私も読んだことがないので、読んでみたくなりました。
まさかの逆輸入?
ゴーリーと絵画
パオロ・ウッチェロ、ピエロ・デラ・フランチェスカ、
これらのアーティストから、強い影響を受けたといいます。
ギュスターヴ・ドレ、ジョン・テニエル、アーネスト・シェパード。
こうした挿絵画家たちも、絶賛しています。
一方で、オーブリー・ビアズリーは
作家の世界を凌駕してしまうので「挿絵としては最低の仕事」と手厳しい。
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ゴーリーの挙げた画家たちの中で、
前半の画家たちを“凍りつく瞬間を捉える”と評したのは言い得て妙。
目に浮かぶ方も多いと思いますが、まさに、ですよね。
ビアズリーについての言葉は裏を返せば誉め言葉でもありますね。
ビアズリーの絵自体は素晴らしい。
ゴーリーと映画
20世紀初頭のサイレント映画監督ルイ・フィヤードのファンで、
ゴーリー曰く、映画はトーキーになってから駄目になった(!)。
2000年まで存命していたゴーリーは『LAコンフィデンシャル』や
レオナルド・ディカプリオについても言及しています。
古い日本映画もよく観ている!
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小津安二郎の映画のカメラがどんなに動かないかを語る
ゴーリーの熱弁を追っていると、なんだか笑いが込み上げてきます。
小津映画って何度か観たけど、
アメリカ人からするとそんなに特殊なんだなあ。
ゴーリーと芝居
ポエツ・シアターという劇団に参加していたこともあるゴーリー。
勿論、鑑賞する側でもあるのですが、
舞台美術を担当した舞台『ドラキュラ』では一気に有名になりました。
ただゴーリーは監督ではなく美術の自分が注目されることを、
引け目に感じています。
初日で公演打ち切りになりましたが、思い入れは一入だったよう。
この作品、インタビューでは他人事のように言っている気がしますが、
確か、ゴーリーが演出していたんじゃ……ちょっとはっきりしない。
晩年でも幾つも演劇の演出に携わるなど、芝居に関してはインプットのみならず、
アウトプットも行い、多彩さを発揮しています。
明日はカレン・ウィルキンソン『エドワード・ゴーリー インタビュー集成 どんどん変に・・・』―ゴーリーの肖像―の予定です。
それではまた。