少年を蝕む夏のまぼろし。長野まゆみ『夜啼く鳥は夢を見た』

 

皆さま、こんにちは。グレコです。

今日は長野まゆみ著『夜啼く鳥は夢を見た』について。

 

その作品世界

著者は初期のころ少年が主役の不思議で美しい作品を

幾つも発表していました。

鉱物や色彩、植物にこだわった世界観を展開します。

この作品もその一つで、

夏の少年たちのゆめまぼろしのような物語です。

 

作品と出逢うまで

私としては少女の世界観のほうが好きなので、

少年の世界観というのは理解が浅いかもしれません。

同じ作家の『少年アリス』や『野ばら』といった作品も

図書館で見つけて読んだのですが、

静と動の描写の動の部分で置いていかれるようなかんじがしてしまい、

静の描写を貫いた話を読んでみたい――と思って探してみたら、ありました。

それが『夜啼く鳥は夢を見た』です。

スポンサードリンク
 

物語について

恐らくは少年の夏休み。

しかし詳しい言及はされていません。

名前も主人公の兄弟は紅於、頬白鳥といい、

現実世界とは違う時空を舞台にしている印象です。

兄弟が訪れた祖母の家には草一という従兄弟がいます。

祖母が登場するのは一度きりで科白もなく、

沼に囲まれひっそりとした土地に、

少年たちだけがいるかのように描かれています。

 

気のしっかりした紅於は人当たりはいいけれども本音が見えない草一を嫌い、

草一は沼を怖れながらも夜は沼の傍らをうろうろ彷徨い、

病弱で浮世離れしたところのある頬白鳥は沼に惹かれて已まない。

 

彼らが夏を過ごす沼地は、ちょっと怪談じみている。

 不思議な噂のある沼。

少年の腕のような白い水蓮の花。

はじける水面の泡から聞こえる鳥の呼び声。

 

結末は匂わせるに留め、不安を感じさせます。

筋立てのある話ではありますが、すべては暗示的で、

読み手に多くが委ねられています。

 

まとめと感想

水飛沫を硝子に喩えるなど、視覚に訴える描写に溢れ、

旧字や旧仮名遣いを含んだ文章が、装飾枠のように物語を彩ります。

私のような絵を描く人間からすると、

作り込まれた箱庭のような世界が非常に楽しめた一冊でした。

そして、美しい世界観が光とするならば、

影のように寄り添う怪奇的な部分が、物語に深みを与えています。

 

不思議で美しくも妖しい世界――。

何故だかこういうのが好きというのが自分に一貫してあります。

ふらふらブレやすい人間で、いろいろなものを抓み食いしてみるのだけど、

結局同じところに戻ってきてしまう。

単調な生活のスパイスのようなものかもしれない。

今日も怪奇にエナジー補給。

 

オマケの遊び心

因みに、十四ある各章を繋げると、

一つの詩になります。

明日は平野啓一郎『一月物語』の予定です。

それではまた。

スポンサードリンク
 
広告を非表示にする