短く読みやすい。土方・沖田の人物像も魅力の司馬遼太郎『新撰組血風録』

 

皆さま、こんにちは。小暮です。3月です。

今回は司馬遼太郎著『新撰組血風録』についてです。

 

司馬遼太郎と『新撰組血風録』

歴史小説家として名高い司馬遼太郎。「竜馬がゆく」「坂の上の雲」などがよく知られているかと思います。新撰組を題材にした長編には「燃えよ剣」があり、土方歳三が主役です。

ご紹介する「新撰組血風録」は新撰組にまつわる短編集で、近藤、土方、沖田といった有名どころに加えて、篠原泰之進、山崎蒸など渋い面々にも焦点を当てた作品が並びます。

創作された人物である加納惣三郎の話も。こちらは松田龍平さんが主演した映画「ご法度」の原作です。

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イメージどおりの人物像が魅力

無骨に見えてときに長広舌をふるう近藤、人を斬りながら冷静に分析する土方、若々しく純粋でどこか浮世離れした沖田など、イメージどおりの人物像が魅力です。

印象に残ったのが沖田と山崎蒸。沖田は子供と無邪気に遊ぶなど、少年のようにどこかあどけなく、剣より書物のほうが似合いそうな雰囲気すらありました。

山崎は家の不名誉を背負っていたり何かと器用だったりと(器用貧乏?)存在感のある性格づけ。ただ山崎の先祖の話はフィクションらしいです。

 

 印象に残った「長州の間者」

土方の策士ぶりがよくわかる「鴨川銭取橋」、井上源三郎の憎めない人柄が微笑ましい「三条磧乱刃」、近藤・土方がつい若い沖田におせっかいを焼いてしまう「沖田総司の恋」など粒ぞろいですが、あえてマイナーと思われる「長州の間者」を。

深町新作という浪人が主役です。恋人の京娘と結婚し彼女の店を継ぐ話が出ていましたが、武士の身分を捨てるのが嫌で蹴り、長州の間者になってしまいます。

初対面の人物に対して易々と死を口にするくだりで、読みながら頭を抱えたくなってしまいました。若気の至りの取り返しがつかない。死に急ぐ姿が生々しく、なんとも遣る瀬なかったです。

 

新撰組の光と影

スパイが入っていたら疑心暗鬼にもなるでしょうが、新撰組は総じて内輪もめで殺しすぎですね。「新撰組血風録」はかなりフィクション要素が強いというものの、内紛が頻繁だったのは史実のようです。

そうした新撰組の恐怖に満ちた側面も映し出しながら、近藤や土方のユーモラスなエピソードもバランスよく交え、ひとりひとりが生き生きと描かれていました。まさに活写といえるのでは。

 

まとめ

一つ一つの作品の長さがちょうどよく、読みやすいと思います。人物はみな魅力的ですが、特に沖田総司ファンにおすすめではないかと。

 

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