狂気?ジョーク?とてつもなく変な本ウラジーミル・ナボコフ『青白い炎』

 

皆さま、こんにちは。小暮です。

今回はウラジーミル・ナボコフ著「青白い炎」についてです。

 

技巧派といわれる作家ナボコフ

ナボコフは20世紀前半に活躍したロシア出身の作家。代表作はかの有名な「ロリータ」です。残っている写真を見るといかにも気難しそうですが、実は諧謔(ユーモア)を好んだそう。

ロシア出身ですが英語の作品を数多く発表しています。母国語以外で小説を書くってすごいことです。しかも言葉遊びをちりばめた、技巧派として知られています。

とはいえ、私は英語がさっぱりですので、せっかくの技巧も拾えません。ちなみにご紹介する「青白い炎」では、長編詩パートに英語の原文が併記されております。

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「青白い炎」のあらすじ

あらすじというのが適当なのか迷うのですが、ざっくりとした内容について触れおこうと思います。

999行からなる詩「青白い炎」を遺した老詩人ジョン・シェイド。その詩の版権を買い取り、序文と註釈をつけて一冊の書にまとめようと試みるのが、シェイドの隣人にして友人のキンボート博士です。

本書のほとんどを占めるのが、キンボートによる詩の註釈。しかし、この註釈は本来の詩の意味合いから大幅に脱線し、キンボートの母国ゼンブラと革命、そして暗殺者の話が織り込まれ、曲解されていきます。

そもそもキンボートはシェイドの友人ではなく、シェイドにつきまとい、隣家から覗くなどの奇行を働いていたことが浮かび上がり、薄気味悪い謎に包まれた、詩の註釈書でもなんでもない「奇妙な本」が出来上がります。

 

「青白い炎」を小説として読む

まさに「変な本」というのがぴったりの一冊。

学術書の態の小説というのが物珍しく、とっつきにくいのですが、註釈を読みながらきちんとプロットも追えます。

「謎の国ゼンブラで起こった革命」「キンボートとシェイドの関係」「シェイドの最期」この3つが絡み合い、読み進めるうちにちゃんと明らかに。

註釈なのにエピソードがふんだんに盛り込まれ、またシェイドの詩句から何故そうなるという”こじつけ解釈”が展開されるあたりは、思わず笑ってしまいます。

自伝的な詩だったのに、珍妙な妄想註釈を付された老詩人が気の毒です。明言はされていませんが、示唆されているもっとも有力なオチには3つの要素が集約し、一応の納得がいく終わり方になっています。

オチが明言されていないのが、ナボコフの意図であったのだろうとされているようなのですが。

 

ちゃんと楽しめる実験作では

「青白い炎」は実験的作品だといわれているようです。確かにヘンテコな本。でも、私のようなのが読んでもなかなか楽しめました。

たとえば全ページ白紙の本を渡されて「小説です」といわれても、ちょっと……と思いますが、ストーリーも、主人公の思考回路も、そして彼にウンザリしている周囲の人々の心理も、きちんとわかるようになっていますし、「青白い炎」はちゃんと小説なのではないかと思いました。

 

まとめ

個人的には、知的な悪ふざけはグロテスクな悪ふざけと同じくらい好きなので、面白がって読めました。といいつつ、英語がわからないので、実は半分くらいしか理解できてないのかも?

 

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